ひとたび起業すれば、困難な問題に直面すること、難解な壁にぶつかること、往々にしてあるでしょう。
起業なんて、その連続であると言ってもいいかもしれません。
今回は、そんな状況に陥った時の、考え方の話です。
どうしてもうまくいかない時、何をやっても結果が出ない時、「どんなことがあっても前を向こう」などと一言で申し上げても、なかなかそうはなれないものです。
人間は基本的にネガティブな状況に対する感情が、優先されるようになっているからです。
つまり、プラスの思考よりも先に、マイナスの思考が敏感に働いてしまうのです。
「前を向く」前に、悩みに悩んだり、悔やみに悔んだりする時間が必要になるという訳です。
失恋した時に「しばらく思いっきり泣いて、スッキリさせる」とか、何か失敗した時に「あえてとことん落ち込んでから、パッと気持ちを切り替える」などといった方法は、単なる対症療法と思われがちですが、実はあながちそうでもなく、理にかなっているとも言えるのです。
発熱は正常なプロセスである
風邪をひくと、熱が出たりしますよね。
何で熱が出るかというと、温度を上げることで、風邪の原因となるウィルスなどの増殖を抑えるためと言われています。
要するに、人間が本来持ち合わせている免疫力が、風邪という病気と戦っている証という訳です。
免疫力すらなかったら、発熱することもありません。
そう考えると、熱が出るという症状を薬で無理矢理抑えようとするのは、何だか違和感を覚えませんか?(薬の服用を否定するものではありません。私自身も薬にはよくお世話になりますので(笑))
いずれにしても、熱が出るということは回復に向けた正常なプロセスであり、前に進むためのポジティブな症状であって、決して意味がなかったり、デメリットのみのネガティブなものだったりする訳ではないのです。
クレームは実はありがたいこと
同じように、鋭意事業を進める上で、ひいては有意義な人生を送る上で、何らかの困難な状況に陥った時、それに意味がないなどということは決してなく、そこに何がしか含まれているポジティブな意味を見出すようにしてみると、随分と気持ちが楽になることがあります。
例えば、満を持して世に送り出した商品やサービスがそれなりに売れたのはいいが、何らかの粗や不足があり、顧客からクレームを数多くいただいてしまったとなれば、気持ちは相当落ち込みますよね。
ただ、多くのクレームをいただくということは、逆に言えばそれだけ影響力があったということです。
それだけ使ってくれた顧客がいて、それだけ真剣に考えてくれたということです。
それだけ改善のためのヒントを、多くもらえたということです。
購入した商品やサービスに何の期待もなければ、使いもせず、仮に使ったとしても、クレームなどしてこないでしょう。
「何だコレ」「ダメだコレ」「二度と買わない」という判断一発で、ほったらかして何もしない、以後は見向きもしない、実はそういう人たちが一番怖いのです。
反応も何も分からないので、手の打ちようがないからです。潜在的にこういう人ばかりが増えてしまうのは、もはや致命的なのです。
話は変わりますが、先日、とある企業で新入社員研修を統括している管理者と話す機会がありました。
曰く、多くの新入社員は大人しすぎて、こちらから語り掛けて引き出してやらないと、何も言ってこないと。
報告や連絡はおろか、質問すらしてこないから、理解しているのかしていないのかすら全く分からないと。
ひたすら苦言を呈しておりました。
質問でも、不平でも、不満でも、問題でも、提案でも、何かしらのアクションがあれば対処のしようがあるのですが、何もないというのが一番困るという訳です。
「それは新入社員から見たら、今はまだあなたが雲の上の人だからですよ」と、持ち上げてはみたのですが、どうやら、中堅のリーダーや、新入社員とそれほど年齢の変わらない先輩たちも、同じような印象を持っているそうです。
結局、「今の若者は…」という、オヤジ世代にありがちな愚痴をこぼしながらお互いに傷を舐め合うというところに落ち着いてしまったのですが(笑)。
少し話が逸れましたが、ともあれ、商品やサービスに対して、クレームしてくれる(何かしらのアクションをしてくれる)というのは、実はそれだけありがたいことだということです。
困難やトラブルも重要なファクター
さて、そうやってポジティブな意味を見出すように考える癖をつけると、何がしかの困難や苦労も、成功までの過程においては必要となる重要なファクターであると思えるようになります。
クレームだって、その商品やサービスが爆発的に売れるまでの過程では、よくあることだったりするのです。
今、あなたに起きている困難やトラブルといった現象は、風邪をひいた時の発熱と同様、あるいは顧客からいただくありがたいクレームと同様、実は成功に辿り着くまでに必ず通過する、あるいは通過せざるを得ない重要なプロセスなのです。
そう考えることで、困難やトラブルをただただ真正面から受け止めてそれを潰そうとするのではなく、それらを受け入れ、うまく付き合うことが出来るようになります。