「目的達成のためには死に物狂いになって苦労しなければならない」
「辛い思いなくして成功しようなんて考えてはならない」
「苦しさの先に初めて幸せがある」
などなど。
世の中には、目的を達成したり、成功や幸せを手に入れたりするためには、辛い思いや苦しい経験、血の滲むような努力をしなくてはならない、といった揺るぎのない風潮があります。
もちろん、これを私も決して否定はいたしません。
というより、当サイトの至るところで申し上げていることも、むしろそれに沿った内容であることが多いはずです。
特に、厳しいビジネスの世界で自ら起業してからの長い道のり、要するに起業家人生においては、何事もなく、最後まで順風満帆でそれを全うすることなど、皆無と考えておいたほうが間違いなく賢明だからです。
大事なのは今の状況に胡坐をかかないこと
しかしながらこれは、必ずしも無理して茨の道を歩まなくてはならないということではありません。
事業が早々に軌道に乗るなど、割とすんなりうまくいってしまった人も、世の中にはたくさんいます。
それが実力なのか、単に運が良かったのか、それとも何か別のファクターが働いたのか…といった議論は置いておいて、そういった人ほど、「自分はもっと苦労しなくてはいけないのではないか」「もっと辛い思いをしなくてはならないのではないか」などと考えてしまうことがあります。
真面目で、現実をわきまえた方であればあるほど、そういう思いは強くなることでしょう。
そう考えてしまうのは、誰も否定など出来ない無理からぬことであるばかりか、むしろ、素晴らしいことであるとも言えます。
ですが一方で、苦労や辛い思いをしなくて済むならそれに越したことはないのです。
少し逆説的ではありますが、これもまた、誰も否定の出来ない事実でしょう。
大事なのは、あなたが「もっと苦労しなくてはいけない」と考えることではないのです。
すんなりとうまくいってしまった今の状況を、当たり前だと思わない事なのです。
その状況に胡坐をかいて、謙虚さを失ってしまうことが、起業家としては最もNGなのです。
放っておいても苦労や困難はやってくる
すんなりうまくいってしまったという方であっても、それまでの起業家人生をつぶさに振り返ってみれば、本当に全く何の苦労や大変な思いもせず、今の状況がある訳では決してないでしょう。
多かれ少なかれ、といった幅はあるかもしれませんが、それなりの努力や辛い思い、苦しい経験をしているはずです。
それを踏まえればなおさら、あまりに「もっと苦労を…」「もっと辛い思いを…」といった思考に囚われ、義務感あるいは強迫観念とでも言うべき考えに支配されてしまうと、起業家人生、ひいては人間としての生活自体が、堅苦しい、息の詰まるようなものになってしまいます。
たまには思考をそういった束縛から解放して、うまくいっているという今の素晴らしい状況を思いっきり享受することだって、今後も長い期間、ずっと走り続けるためには必要なのかもしれません。
あなたが「もっと苦労しなくてはいけない」などと考える・考えないに関係なく、放っておいても必ずやこの先、幾多の苦労や困難が待ち受けているのは、もはや間違いのないことなんですから(笑)。
起業家人生に明確なゴールはない
人生はよくマラソンに例えられます。
ただ、マラソンには42.195km先のゴールというハッキリとした終わりがありますが、基本的に起業家人生には明確な終わりがありません。
もちろん、自分の中でゴールを定め、「これを手に入れたら」「こういう状況になったら」リタイアして隠居生活に入ると決めているような起業家もいますが、マラソンと違って、どんなに時間はかかろうとも走っていれば(ともすれば歩いてしまっても)いつかは必ず辿り着くゴールという類いのものではありません。
また、たとえ自分の設定したゴールに辿り着いたとしても、その時にあっさり起業家人生を辞められる状況にはないかもしれません。
周りの人間や社会の要望など、必要に応じて、さらに走り続けなくてはいけないことだって考えられるのです。
あるいは、起業家すなわち、自ら起業に踏み切るような志のある方においては、本能的に仕事をすることが好きであり、自分の存在意義の追及や自己実現といった目的のため、一生仕事をし続けようとする人、いわゆる「生涯現役」を貫く意志をお持ちの人も少なくありません。
そういった人にとっては、起業家人生のゴールや終わりなどは、考えることすら及ばないものであるという訳です。
いずれにせよ、そんな長距離勝負の起業家人生において、合間合間で肩の力を緩めることもしないと、文字通り別の意味での「リタイア」が待ち受けていることになり、とてもではありませんが完走など出来ないことでしょう。