「思い立ったらすぐ行動しろ!」
「やりたいことは先延ばしにするな!」
「明日やろうはバカやろうだ!」
などなど、すぐに行動に移すことの重要性を説いた言葉というのは、誰もが耳にしたり、言われたりしたことがあるのではないでしょうか。
親や上司など、こういった言葉が口癖になっている人間が周りにいる(いた)、といった方も少なくないかもしれません。
また、
「思い立ったが吉日」
「鉄は熱いうちに打て」
「善は急げ」
などといった、同様の意味合いを持つ格言や教えも、この世に溢れ返っています。
特にビジネスにおいては、これらの言わんとするところが大変重要であるということは、多くの方が認識しているかと思います。
それは、ライバルが無数に存在し、常に戦々恐々としている厳しいビジネスの世界において、タイムラグを発生させることのリスクが、時に甚大なものになるからです。
要するに、自らが行動を躊躇している間に、ライバルが先んじてしまったり、ベストなタイミングを逸してしまったりと、大きなチャンスをみすみす逃してしまうことがあるということです。
遅れは命取りになる
起業家にとって、こういった決断の遅れは命取りです。
決意を固めるとか、覚悟を決めるとか、腹をくくるとか、そんな状態に昇華するまで待っていたら、確実にビジネスチャンスを逃してしまいます。
思い立ったらすぐにやってしまうくらいがちょうどいいのです。
また、人間とは弱いもので、時間が経ってしまうと、決意が固まるどころか、もはややる気やモチベーションが低下してしまっていることだって、往々にしてあるのです。
自分の気持ちですら保証出来ないのが人間
こんな例があります。
私の知人で、ほぼ同時期に、健康のために毎朝のジョギングを決意した2人がいました。
ただ、その頃はいよいよ年の瀬といった時分で、要するにそれ以降どんどん寒くなっていく時期だったのです。
そのため、2人のうち1人は、「今は寒いし時期的にキリも悪いから、暖かくなってキリもいい新年度(4月)から頑張る!」と言って、すぐには行動に移しませんでした。
一方、もう一人のほうは、文字通り思い立ったが吉日とばかりに、寒くても次の日の朝からジョギングを開始したのです。
結果、どうなったか。
4月になっても、前者の知人が、朝のジョギングを始めることはありませんでした。
後者は、それ以降、季節を問わず今でもほぼ毎日続けているそうです。
この話、すぐに行動を起こせる人間とそうでない人間の特徴が、凝縮されているような気がします。
すぐに行動を起こせる人間は、時期が悪かろうが準備が整ってなかろうが、とにかく思い立ったら間髪を入れずに即行動し、かつ、それを長く続けることが出来ます。
すぐに行動を起こせない人間は、行動を起こせない理由、先延ばしにする理由を、あれやこれやと言い連ね、結局何もしないのです。
前者の言葉の中にある、「寒いから」「時期的にキリが悪いから」というのが、まさにそれです。
繰り返しになりますが、人間というのは本当に弱いものなのです。
今日盛り上がっている熱い気持ちを、明日も、1か月後も、1年後も、同じように維持出来る人間というのは、それほど多くはいないのです。
明日になっても気が変わらないことを、確実に保証出来る人間なんて、一人もいないのです。
他ならぬ自分自身の気持ちなのに、です。
即行動が結果としてうまくいく
とはいえ、ビジネスにおいては十分な準備や根回しが必要だ、といった反論もあるでしょう。
当然、「石橋を叩いて渡る」くらいの慎重さが要求される局面だってあるでしょう。
それ故、思い立ったが故に即行動し、それが勇み足となって失敗してしまうことだってあるかもしれません。
しかしながら、だからこそビジネスというものは面白い訳で、これはもう確率論の問題でしかないのかもしれません。
つまり、思い立った時に先走ってやってしまうくらいのほうが、つまりは勇み足と思われるくらいのほうが、結果としてうまくいくことが多いのは、一つ間違いはないのです。
さらに言ってしまえば、準備や根回しが大事だとはいえ、いくら時間をかけようが、いくら慎重になろうが、完璧なそれらなど存在しないというのが、私の持論です。
※参考 →「完璧な準備など存在しない」
これらのことは、ビジネスにおいてのみならず、人間が生きる上でのすべての事象において、当てはまることなのかもしれません。
だからこそ、冒頭で挙げたような、すぐに行動に移すことの重要性を説いた言葉が、持てはやされるのではないでしょうか。
すぐに行動しないことを異様に怖がる人たち
ここまで、起業家にとって、決断の遅れが命取りになったり、即行動することが結果としてうまくいくことが多かったりすることなどを理由に、「思い立ったらすぐに行動する」ことの重要性を説いてきました。
ところで、それ以外で、起業家としてすぐに行動に移すことが大変重要である大きな理由の一つに、会社などの組織が船に例えられ、経営などその運営が航海に例えられるといったことが挙げられます。
つまり、会社経営や事業運営は、船で大海原を航行するようなものであり、起業家は、その最も重要な舵取りを行う役目を担っているという訳です。
ましてや、個人事業主や少人数の組織であれば、「船」ではなく小さな「舟」、すなわちトップである起業家が体を張って一生懸命漕ぐことをしなければ、前に進めないようなものであるはずです。
その中で、決断を先延ばしにし、ともすれば今日出来ることを今日やらず、明日に先送りするといった状況を作り出すことは、いったいどのような意味を持つのでしょうか。
それは要するに、舟を漕がないということ、舟を前に進める努力を自ら拒んでしまっているということに、完全に等しいのです。
波風の激しい大海原で、舟を漕ぐことを止めてしまったら、いったいどうなってしまうのかということについては、全く想像するに難くありません。
予想だにしない方向へ流され、そのうち正しい方角を見失い、あるいは転覆してしまうことだってあるでしょう。
起業家にとって、決断の遅れや先延ばし、行動の先送りは、それくらい大変な意味を持つものなのです。
そしてそれは、トップである起業家に依存する割合が大きければ大きいほど、言い換えれば、組織という舟が小さければ小さいほど、顕著になるはずです。
今日出来ることを明日に先送りすることはおろか、逆に明日やればいいことですら今日やってしまうくらいの勢いで、仕事量(舟を漕ぐ力)を2倍・3倍と増やしていかなければ、あっという間に波風に流されてしまいます。
起業家はいわば「自立家」「独立家」ですから、それくらいの勢いで、とにかく自発的にガンガンと行動していかなくてはなりません。
それが文字通り、「自立」や「独立」という言葉の意味であるはずです。
すぐに行動しないことが、それらの正反対の意味を示す行為であると気付いており、ひいては、来るべき成功をも先送りにしてしまうことであるという条理を心底理解していること。
そして、臆病なくらいにそれを怖がっていること。
…実は成功する起業家には、往々にしてそんな共通点もあったりするものなのです。