起業家たるもの、事業を興し、自らの力で生きていくんだという、それなりのプライドを当然ながら持っているはずです。
プライドを持つことは、とても大事です。
ひいては、自分に自信を持ち、毅然とした態度でビジネス上の困難や問題に対峙するのは、周りの人間から見ても非常に頼もしいものです。
※参考 →「自分に自信を持つ」
ただ、それが誤った方向へ過剰に進展し、起業家として最も大切な「謙虚さ」を失ってはなりません。
これに関しては、他のページでも都度触れておりますので、詳しい説明はそちらに譲ります。
※参考 →「起業するほうが偉いという訳じゃない」 →「現場へのリスペクトを忘れるな」 →「「謙虚である」ことの意味を考える」 →「「謙虚である」ことの意味を考える(その2)」
プライドや自分への自信が勢い余って、芳しくない方向に進んでしまう例としては、顧客や市場のニーズを無視して、自ら考案したプロダクト(商品やサービス)のプランで突っ走ってしまうようなケースがあります。
ただ、長い目で見ればイノベーションはそういったところから生まれることもありますから、一概に100%NGだとも言えないところがビジネスの難しさではあるのですが(笑)。
とはいえ、実際には「プロダクトアウト」と「顧客や市場のニーズを無視する」というのは、全く異なるものです。
その辺りも含め、以下も併せてご参照ください。
※参考 →「最終形に猪突猛進は要注意」 →「マーケットインとプロダクトアウト」
自らのプランで突っ走るケース
上述した通り、起業家はそれなりのプライドを持っているが故に、時に周りを無視して突っ走りがちです。
そして、そんな自分に酔いしれ、さらにそれが加速していく…といった起業家は、たくさんいらっしゃいます。
厄介なことにその多くは、起業家自身にそんな自覚がなく、無意識のうちに進行している顛末だったりするのです。
周りから見れば、いわゆる「暴走」とも捉えられかねない状況なのに、です。
特に、起業家が自らの考案したプロダクトプランについて語り始め、どんどん気持ちが高揚し、ノリノリになって、次から次へとその場で思いついた不必要な新機能やアイデアが追加されていく…といったパターンは、後を絶ちません。
仮に、複数の関係者がその話を聴いていたとしても、起業家は当然その組織のトップであることが多いため、誰も異論を唱えられないという訳です。
果たして、そのままそれがプロダクトとして現実のものとなり、世の中に提供されてしまうのです。
しかしながら、単なる思いつきで塗り固められたプロダクトというのは、ただ複雑でややこしくなっているだけで、顧客や市場が抱えている課題や問題、そこに端を発するニーズといったものが、全く無視されていることが多いものです。
そして、そういったプロダクトは、当然のことながら世の中に受け入れられず、うまくいかない可能性が高いでしょう。
未だ絶大なる人気を誇るテレビドラマ&映画「踊る大捜査線」における、織田裕二さん演じる主人公の「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」という有名なセリフではありませんが、本当に大事な問題やニーズというものは、起業家の頭の中ではなく、顧客や市場という現場にあるからです。
つまり、顧客や市場といった現場に直接足を運び、謙虚に、そして地道に、問題やニーズを吸い上げる姿勢が、非常に重要であるということです。
起業家があまりに自分に酔いすぎると、ともすればこういったことを全くしない、独りよがりの状況に陥りがちなのです。
「自信を持つ」ことと「酔う」ことは違う…けど
要するに、「自分に自信を持つ」ということと、「自分に酔う」ということは、全く違うということです。
しかしながら、起業家として多少自分に酔っている人というのは、私個人的には大好きです(笑)。
そのほうが、人間らしさが感じられるというものです。
また、自分で自分に酔わずして、人を酔わせることなど出来ないとも思っているからです。
当ページの掲題を「自分に酔うな」ではなく「自分に酔いすぎるな」としているのは、実はそんな思いもあってのことなのです。
何事にも限度があり、「酔いすぎない」ことが大事であるということです。
なんだか、お酒と全く一緒ですね(笑)。