自己管理を如何に行うか

組織に属するが故の面倒な指揮命令系統やナンセンスなセクショナリズム、口うるさい上司や嫌味なライバルなどとの煩わしい人間関係、始業時間・就業時間といった画一的な時間管理…。

こういったものにつくづく嫌気が差し、いよいよ我慢がならなくなったところで起業に踏み切る…。

そのような元サラリーマンの起業家は、決して少なくありません。

確かに、起業すれば当然、こういったものに一切縛られることのない、自由な環境に身を置くことが出来るというのは、基本的には間違いのないことです。

そしてそれが、何物にも代えがたい起業の醍醐味の一つでもあることも、決して否定は出来ません。

自由と不安とのバランスをどう保つか

ただ、それと引き換えに、すべての意思決定権とその責任が自分自身に伸し掛かるため、そこにはえも言われぬ不安とプレッシャーが生まれてきます。

それ故、享受される自由と、一方で背負わねばならない不安やプレッシャーとのバランスをどう保つか、言い換えれば、自己管理を如何に行うかということが、非常に重要になってきます。

すべてを自らがコントロール出来る世界では、逆に言えば、その環境にいくらでも甘んじることが可能だからです。

そして、甘んじれば甘んじるほど、もはや際限なく怠惰や不精といった方向へと流されてしまう可能性は、極めて高いと言えるのです。

要するに、どれだけ自分を厳しく律することが出来るかということが、起業の成否を左右する大事なポイントとなると言っても、決して過言ではないのです。

人間は緩い環境に甘んじているとどんどん弱くなる

いくら自由に仕事が出来るからと言っても、面倒な仕事をやらなかったり、あるいは後回しにしたりと、そんなことばかり続けていると、いつしか歯止めがかからなくなり、気付いた時には取り返しのつかない状態に陥ってしまいます。

もちろん、優先順位を設定し、重要なものから片付けていくといったタスク管理は非常に重要ですが、「面倒だから」「やりたくないから」「明日でも大丈夫だから」といった理由でやらなかったり後回しにしたりしていると、間違いなく万事がその調子でズルズルと行ってしまうでしょう。

人間は弱いもので、どんなに自分は大丈夫だと思っていても、余程強い意識を保っていない限りは、そこに制限や管理が伴わないという環境にどんどん甘えていき、いつしかそれが当たり前となってしまうものだからです。

一旦そうなってしまうと、新たな負荷や困難が発生した際、非常に抵抗を感じるものです。

要するに、緩い環境に甘んじていると、どんどん抵抗力が落ちていき、弱い人間になっていくのです。

そうならないためには、背水の陣で臨むという覚悟を自ら意識して強く持ち、やると決めた仕事は必ずその日のうちにやり切ってしまうことです。

※参考
→「背水の陣で臨め
このページでも言及しておりますが、まさに毎日を「夏休みの最終日」であるかのように、決死の覚悟で過ごすことです。

今日、たまった宿題をすべて終えなければ、明日の登校は決してあり得ないのです(笑)。

※ところで、例え話として挙げるのは少々おこがましい上、全く状況は異なるのですが、「環境や状況によって抵抗力が落ちていき、人間は弱くなってしまう」ということを裏付けるものとして、当サイトでは何度も取り上げさせていただいているサッカー界のレジェンド、キングカズこと三浦知良さんの話があります。

ケガなどもあって途中出場が続いていた三浦さんが、何年かぶりに開幕スタメン(そのシーズンの大事な初戦(1試合目)におけるスターティングメンバー)に選ばれた時、その試合直前に随分と緊張してしまい、やはりしばらく(開幕スタメンの)経験をしていないと、人間は弱くなってしまうものなんだということを悟ったそうです。

つまり、ただでさえ独特の緊張感がある開幕戦において、試合開始時はプレイングメンバーではなく、ベンチにいるといった状況が続き、それに慣れてしまうと、いざ久しぶりに自分が開幕戦のスターティングメンバーとなった時に、大きな緊張や予想外の感覚に襲われてしまう…。

何十年というプロ経験がある、百戦錬磨の大ベテランですら、そういう状況に陥ってしまうということなんですよね。

「久しぶりの開幕戦で、ちょっとあがっていた」と、試合後のインタビューでご本人が苦笑交じりに語っていたのが、とても印象的でした。

健康管理も重要な自己管理の一つ

また、起業家の自己管理というと仕事の進め方やそれに対する心持ちやスタンスばかりに目が行きがちですが、もちろんそれだけではありません。

いわゆる健康管理も、重要な自己管理の一つです。

体調不良で休んでも報酬が発生するという、いわゆる「有給休暇」などという甘いものは、起業家にはありません。

特に起業当初は、自らがダウンしてしまうことは、事業が凍結するということに100%等しいはずです。

そうならないためにも、自分自身の健康管理と、万が一に備えて自らが不在、あるいは最小限の介入でも何とか事業が廻るような仕組みの構築、ここに注力すべきでしょう。

つまりは健康管理を意識し、さらにはそれに付随するリスクを検討することで、昨今大きな話題にもなっているBCP(事業継続計画、Business Continuity Planning)にも繋がってくるのです。

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