仕事が出来る人間か、そうでないかは、その人の仕事場を見れば分かるという話があります。
デスク上を始め、仕事が出来る人間の仕事場は、きちんと整理整頓が行き届いているという見解です。
確かに、無駄なものが排除され、綺麗に整理整頓されたデスクや仕事場というのは、そのままその人のイメージとして映ることが多いものです。
故に、整理整頓を心掛け、仕事場を綺麗に保つことで、それを見た人が「きっと仕事もきちんとしているんだろうな」という印象を受ける可能性は、決して否定出来ないでしょう。
真逆の主張
しかしながら、全く逆の言説も存在するのは事実です。
「あれやこれやと忙しく働いていれば、必然的にオフィスは乱雑になるはずで、仕事の出来る人間ほど雑然の中で働いているものである」
「綺麗に片付けられたデスクなんて、何のタスクも何の思考も行われていない証拠にすぎない」
「時間外ならいざ知らず、日中の業務時間帯まで綺麗に整理整頓されているオフィスなんて、きちんと仕事が為されているかどうかさえ疑問だ」
「飛びぬけて仕事の出来る人間のオフィスは、決まってカオス状態である」
…などというのが、その言い分です。
整理整頓で、仕事も理路整然?
この話、どちらかが正解でもう一方が不正解、というものでもないのでしょう。
まさに人それぞれであって、そういう意味では、整理整頓などは仕事の出来・不出来の明確な指標にはなり得ないのかもしれません。
それを前提としつつも、しがない経験からあえて述べるとすれば、「仕事が出来る人のオフィスは、デスク上を始め、全体的に整理整頓が行き届いていることが多い」と私は考えています。
何人もの「この人は出来る」と思わされた起業家の方のオフィスを拝見させていただいた中で、これは私の紛れもない印象です。
一つの考え方ではありますが、オフィスがきちんと整理整頓されている人は、仕事上のタスクにおいても、きちんと整理し、理路整然とこなすことが出来る人なのではないでしょうか。
また、精神的にも乱れがなく、仕事にも迷いがないといった印象を与えてくれることは間違いがありません。
逆に言えば、整理整頓されずにモノが散らかっているということは、その人の仕事に対しても散漫な印象を与えてしまいます。
それは、「モノが散らかっている状態 = 必要な情報も散らかっている状態」という事実を、必ずしも否定は出来ないからでしょう。
さらには、その状態において、当人の「気」までも散ってしまっているのではないかと、思わず勘繰ってしまう訳です。
これらのことは、パソコン(PC)におけるデスクトップでも同様です。
仕事が出来る人のデスクトップは、シンプルで落ち着いた背景画像に、必要最小限のアイコンがぽつんぽつんとあるだけです。
たまに、画面いっぱいに所狭しとアイコンが並んでいるデスクトップを見ることがありますが、当人でさえ目的のアイコンを苦労して探しているような場面を見るにつけ、私は苦笑を禁じ得ません。
一日に何十回、何百回と繰り返されるその時間ロスは、トータルで考えればあながちバカにはならないものであると考えます。
これでは決して「仕事が出来る」状態であるとは言えないでしょう。
専門家の研究でも…
整理整頓されていない散らかった状況が、注意力の散漫を引き起こし、パフォーマンスを低下させてしまうということは、歴とした専門家の研究でも明らかになっているようです。
自分の周りにある雑多なモノが、集中力やタスク処理能力を乱し、ストレスを増加させ、クリエイティブな能力をも鈍化させてしまうのだそうです。
これらはまさに、複数のタスクを同時に行うと、そのどれもが中途半端になるという、「マルチタスク」が呼び起こすものと同じ状態です。
※参考 →「人間は複数のことを同時には出来ない」
大事なのは情報までをも散らかさないこと
最後に、これまでの話を若干覆すような事実を、あえて付け加えておきます(笑)。
アップル社の総帥であった、あのスティーブ・ジョブズさんの仕事部屋は、適度に乱雑で散らかっていたことがよく知られています。
この「適度に」というのがもしかしたら非常に重要であり、彼にとっては、それが最も仕事の捗る環境だったのでしょう。
世界中に数々のイノベーションを巻き起こしたスティーブ・ジョブズさんについて、「全く仕事の出来ないやつ」という印象をお持ちの方など皆無のはずです。
その彼ですら、雑然とした中で日々タスクをこなしていたという訳です。
これでますます分からなくなってしまった感は否めませんが…(笑)。
重要なのはやはり、「モノは散らかっていても、必要な情報や精神(気)までは散らかさない」ということなのでしょう。