100%の万人に受け入れられる商品やサービスなんてそうそうあるものではありません。
それでも、なるべく多くの人に訴求するように、斬新で便利な商品やサービスをビジネスマンは追求する訳です。
もちろん、「若い女性向け」「年配男性向け」「子供向け」などというようにターゲットを絞ったり、あえてニッチな市場を狙ってマニアックな商品やサービスを提供したりする場合もありますが、それとて、そのターゲットや市場の中においては、なるべく多くの対象に受け入れてもらえるよう、創意工夫を図るはずです。
つまりビジネスは、全体の何%の人に訴求するのか、全体のうち何人が買ってくれるのか、といった確率論の勝負なのです。
それ故、少しでもその確率が上がるような施策や工夫が施せるのであれば、もちろんそれをやらない手はありません。
セールスは気配りとその順番がすべて
もっと細かいところで言えば、例えば、セールストークを始めとする営業手法にもセオリーというものがあり、その違いによって売れる確率が大きく変わってくるのです。
セールスは気配りとその順番がすべてという言説すらあります。
何かをする前には、○○をやってちょっとした気配りを見せるとか、何かをした後には、××をすることできちんとフォローするとか、たったそれだけで成約率が格段に上がることがあるという訳です。
どういった順番で何を行うか、といったことさえ守れば、一定の成約率は確保出来ると言ってはばからない敏腕営業マンもいます。
逆に言えば、それを間違ってしまうと、決して成約など叶わないというのです。
例えば、一般的にもセキュリティへの意識が高まっている今の時代、全く見ず知らずの個人宅や企業に対して、いきなり飛び込み営業を行うということは、もしかしたらあまり流行らないのかもしれません。
事実、にべもなく門前払いをくらってしまうことがほとんどのはずです(ただ、飛び込み営業でそれをやられるのは、昔から変わらないことではありますが)。
しかしながら、事前に一手間かけて、Eメール一本、ダイレクトメール一通、あるいはチラシ一枚送っておくだけで、結果は全く変わってくるかもしれません。
要するに、それで確率(成約率)が少しでも上がるのであれば、絶対にやるべきであるというのがビジネスの鉄則であり、成功するための基本であるはずなのです。
Webサイトを作らない会社
少し前、とあるきっかけでご紹介を受けた会社がありました。
その会社、社長の一存で、頑なにインターネット上のWebサイト(ネットショップなど)を作らない会社だったのです。
その社長のポリシーが、「とにかく営業は足で稼いでナンボ」「ビジネスはリアルなコミュニケーションが基本」というもので、それ故、「バーチャルな世界であるネットショップに頼ることなど言語道断」といった社風だったのです。
実はこの会社、ネットショップはおろか、自社を紹介するコーポレートサイトすら作っていませんでした。
決して、創業間もない会社という訳ではありません。
どちらかというと、老舗の部類です。
だからこそ昔気質でWebサイトなど作らない…といった考え方もあるのかもしれませんが、ともあれ、私がその会社の方と話をしてその事実を知り、最初に持った印象を正直に言えば、「ネットショップはともかく、この時代に自社サイトすらないの?」といったものでした。
私は、決してこの会社を非難したい訳ではありません。
言いたいことは、私と同じように考え、同じような印象を持つ人は、実際かなり多くいらっしゃるのではないか、ということです。
要するに、これも確率の問題で、この話を聞いた相手が「この時代に自社サイトすらないの?」と感じてしまう確率は、相当高いのではないかということです。
そう感じさせてしまうことが、良い結果を生むとは少々考えづらいでしょう。
ひいては、間違いなく取引や業績に影響を与えているのではないかと推測します。
実際、その会社の営業マンが、新規の見込み客などから、私が抱いた印象と同じようなことを直接言われてしまうケースも少なくないようで、皆成約を取るのに非常に苦労しているという話を、愚痴交じりにお聞きすることが出来ました。
ここは、ビジネスの鉄則に照らして、良い結果を生む確率が少しでも上がる選択をするべき、逆に言えば、高い確率で負の影響を与えてしまう選択は、極力避けるべきなのではないでしょうか。
Web広告だって同じこと
インターネットにおけるWebサイトの話が出ましたので、引き続きWebの話をします。
アフィリエイトなどに代表されるWeb広告というものは、今やどのサイトにもある、一般的なものですよね。
目を引くデザインの大きなバナーが、Webページの一角を占めているケースも少なくありません。
しかしながらこれ、一般的になりすぎてしまった故…といった理由もあるのでしょうが、ほとんどの人はあまりクリックなどしないのです。
確率としては、良くて数%、多くは0.1%とか、そんなレベルの話なのです。
0.1%とは、1000回表示されて、ようやく1回クリックされる計算です。
それでもサイト運営者や広告主は、それを置く位置や、デザインの工夫などで、少しでもその確率を高めようとします。
また、確率としては非常に低くとも、多くのアクセスを集めることが出来れば、要するに母数自体が大きくなれば、それなりにクリックの数は稼げます。
0.1%でも、10万回表示されれば、100回はクリックされるという訳です。
そうやって母数を増やしながら、一方でクリックしてくれる確率(コンバージョン率)も高めていく…サイトの運営においては、日々そういった勝負が繰り広げられているのです。
繰り返しになりますが、往々にしてビジネスとはそういう確率論の中での勝負といった一面があります。
そして間違いなく、良い結果を生む確率を高める努力を続けるべきであって、それをみすみす怠るべきではないのです。
Web広告一つとっても、それは同じであるということです。
また、一定の確率を見込んだ上での勝負になるという意味では、想定外の事態、いわゆるファインプレーはビジネスの本筋ではありません。
突然、確率が上がったり、いつもとは違う売れ方をしたり、といった場合には、逆に気をつけて、注視しなければなりません。
例えば、0.1%だったクリック率が、突然10%に上がったとしたら、それは間違いなく何かあったと考えるべきなのです。
心ないユーザーがふざけてクリックしまくっていたり、ライバルサイトの運営者がツールなどを使ってスパム的な行為をしていたりするだけかもしれないのです。
※参考 →「ファインプレーには要注意」
確率アップが目的ではない
ところで、私が言いたいことは、決してすべての確率を「明確な数字」として把握し、それを常に意識したり気にしたりするべき、といった話ではありません。
うまくいく確率が少しでも上がることが分かっているのであればそれをやるべきで、あえて確率の低い選択をすべきではないという話であって、あまりにそれを意識しすぎて視野が狭くなったり、こだわりすぎて大胆な策が打てなくなったりすることは、まさに本末転倒なのです。
上述したバナー広告のクリック率など、指標としてのユーザーアクションやコンバージョンなどを分析することはもちろん大切ですが、その数字が「上がった」「下がった」と一喜一憂することで、その確率を上げること自体が目的と化してしまい、ビジネスの本筋の動きに影響が出たり、起業家としてのスタンスが揺らいだりしてしまってはなりません。
これは、起業の成功というそもそもの大義に関しても同様で、決して起業の成功率などに惑わされ、自らの意思や行動を左右されるべきではないのです。
※参考 →「起業の成功率に惑わされるな」