突然ですが、「修正」と「是正」の違いを尋ねられて、即座に答えられるという方はいらっしゃいますでしょうか。
辞書で調べてみると、どちらも、「間違いや誤り、あるいは不十分な点を直し、正しくすることである」などとされており、単語の表面的な意味だけでは、その違いがよく分かりません。
しかしながら、各種マネジメントシステムなどのISO規格においては、この二つの違いが明確に定義されており、その認識は、ビジネスのあらゆる局面においても、大いに役立つものであると考えられるのです。
そのため、ここではISO規格に倣って、これらの意味や、それにまつわる現実を考えてみたいと思います。
「修正」とは、不備・不具合・不十分な点などを除去するために施す処置であり、単なる手直しや、対症療法にあたるものです。
これに対し「是正」とは、そこからさらに一歩踏み込んだ処置であり、そもそもの原因を除去し、再発を防ぐための根本的な対策と言えます。
つまり、何かしらのトラブルや不備などが発生した場合、とにかくとりあえずはその場を収め、正常な状態に戻すための「修正」を行い、その後、改めて根本原因を追究し、それを除去するための恒久的な対策、すなわち「是正」を行う、というのが、正しい対応の姿勢とされているのです。
修正だけでは完了と言えない
ところが多くの場合、単なる「修正」で完了してしまうことが多いようです。
それ故、一定時間の経過後に、再び同様の現象(トラブルや不備など)が発生し、その度に、やはり同様の「修正」を施して…といったことを、延々と繰り返しているという訳です。
例えば、自社の商品やサービスに不具合があり、顧客から厳しいクレームをいただいたとします。
その際、顧客に謝罪し、場合によっては返金などの処置をとり、あるいは菓子折りを携えて直接お詫びに伺ったりします。
これらはあくまで、「修正」に過ぎません。
さらに一歩踏み込んで、なぜ不具合が発生したのか…自然発生したのか人為的ミスなのか、特殊な問題なのかそれとも往々にしてあることなのか、いずれにしてもそもそもの根本原因は何なのか、それを防ぐためにはどうしたらいいのか…などなど。
そこまで考え、対策を実施( = 「是正」)して、初めて対応完了と言えるのではないでしょうか。
もう一つ、別の例。
とある商品の出来があまりよろしくなく、売上が非常に芳しくない状況にあるとします。
ここで、顧客の声などを反映させながら、商品の出来を改善し、新たにリニューアル販売を行う…といった対応は、誰でも思いつくことですし、もはや実践して当然でしょう。
しかし、これで留まってしまっては、単なる「修正」であり、恐らく次もまた同じことを繰り返す(出来のよろしくない商品を世に送り出す)だけです。
一方で例えば、そもそも何故、出来のよろしくない商品が販売にまで至ってしまったのかを検討し、企画から開発、そして生産、販売…といった全プロセスを総合的に見直し、改善することは、立派な「是正」となり得るでしょうし、これこそが、経営者(トップ)としてのあるべき姿と言えるでしょう。
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これらのことは、至極当たり前のように聞こえます。
こんな形で、あえて言葉にするほどのことでもないようにも思えます。
しかしながら、一度身の回りのことや、自らのビジネスについて、「何かしら芳しくない状況が発生した場合の対応」という観点から、見直してみてください。
理論的には「是正」まで行うのが当たり前と分かりつつ、実際には「修正」に留まってしまっている事例がそこここに存在している…という現実に、気が付かれた方も多いのではないでしょうか。
根本原因の放置が成功を遠ざける
実際、私がこれまでに見てきた経験からしても、何かにつけ「是正」にまで踏み込んでいない起業家の方は、非常に多いのです。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが、「修正」によってイレギュラーな状態を脱してしまうと、それに安心し、対応を終えてしまうのです。
そして、忙しければ忙しいほど、その傾向は顕著になります。
しかし、もはやお分かりの通り、トラブルや不備が発生する度に、同じような「修正」を繰り返すというのは、非常に無駄なことです。
長い目で見れば、それらが積み重なって、膨大なリソースの浪費になっているはずです。
要するに、トータルで考えれば、それによってさらに忙しさが助長され、あるいは収益を獲得する機会を損失しているかもしれないのです。
「忙しい忙しい」と騒いでいる人ほど、往々にして実は無駄が多く、生産性が上がっていないことがある…という顕著な例と言えそうです。
ともあれ、起業家たるもの、トラブルや不備が発生する度に、成功が遠のいているという認識を持つべきです。
そう考えれば、根本原因を放置しておくことなど、怖くて決して出来なくなるのではないでしょうか。