あまりうまくいっていないという起業家から相談を受けた際に、よく質問されること。
当たり前なのですが、
「なんでうまくいかないんでしょう?」
というもの。
この質問自体は、ごもっともです。それはそうです。うまくいっていない時に、「なんでうまくいかないんだ?」「原因はどこにあるんだ?」「私のどこが悪いんだ?」と、疑問に感じることは、しかるべきです。藁にも縋る思いで、あれこれ聞きたくなるのは、当然のことです。
そして、それに続いてよくされる質問が、
「どうしたらいいでしょうか?」
というもの。
これ自体も、特に問題であるとは思いません。「なんでうまくいかないか」を聞いた上で、「ではどうしたらいいのか」という疑問に思考が流れることは、至極自然なことだからです。
ただ、さらにその後のやりとりに続いて、
「もっと具体的に教えてください」
という台詞が出てきたら、実は要注意であることが多いのです。
もちろん、私の説明やアドバイスが拙いせいもあるのでしょうが、概ねそういうことを言い始める人は、自らの頭で考えることをどこか放棄してしまっていて、少なからず他力本願的な気持ちを持っていることが多いからです。
中には、
「とにかく言われた通りにやるから、事細かに具体的な作業を指示してくれ」
と、きっぱり明言する人までいます。こうなるともう、完全に開き直っている訳です。
それは極端な例にしても、うまくいっていない焦りからか、そしてそれが当初抱いていた崇高な起業家精神を麻痺させてしまうのか、もはや現状を自らの問題として考えられなくなってしまっている起業家は少なくありません。
そういう起業家とは、どんなにやりとりを続けていても、私自身最後まで違和感が拭えないのです。
すべては起業家の責任内
改めて明言すれば、起業はすべて、自らの責任です。
そこで起こる諸問題や数々の困難は、すべて起業家の責任内にあるのです。
当たり前のことではあるのですが、それでも人間は、切羽詰ってくるとこれを見事に忘れてしまうようです。
私が、起業家の方からアドバイスを求められた際、実は、事細かに具体的なアドバイスをすることはほとんどありません(もちろん、内容や状況により、あえてそれをすることもありますが、あくまで具体例として話すに留め、決して強制はいたしません)。
それは、「あなたの責任なんだから自分で考えろ!」といった冷たい気持ちからでは決してなく、主に以下の3つが理由です。
正解は一つではない
問題解決や改善に向けた対策はいくつも考えられるはずです。具体的にアドバイスをしてしまうことで、他の選択肢が見えづらくなり、視野が狭くなってしまう恐れがあります。
起業家自身のほうがより良い具体策を生み出せる
当然ですが、私は世の中にあるすべての業種や職種を経験している訳ではありません。それでも、これまでの経験を基に大抵のアドバイスは可能だという自負はありますが、やはり限界はあるでしょう。具体策に落とし込むのは、実際に生で当該業務を経験し、今まさにリアルタイムでそれに対峙している起業家自身が実践するのが一番いいはずです。私は大枠の視点からアドバイスすることで、具体策に至る手助けをし、起業家の背中をそっと押すことに重きを置いているのです。
考える余地を残しておく
具体策を与えないことで、起業家自身にきちんと考えていただきたいということです。ヒントはいくらでも提供しますが、そこから具体的な答えを導き出すのは起業家自身がやるべきです。その理由は何より、それが起業家としての大いなる成長に繋がると考えているからです。
コンサルタントは引き立て役である
要するに私は、諸問題が自らの責任であることを起業家自身に改めて認識していただくためにも、具体的な処置や解決策に落とし込むところまで私がやってしまうのは、決して得策ではないと考えているのです。
言い換えればそれは、主役は起業家自身であって、決して私(コンサルタント)ではないということです。
起業家たるもの、コンサルタントやアドバイザーは、自分(主役)を輝かせるための引き立て役くらいに考えておくのが良いかと思います。
あくまで、具体策に落とし込み、最終的に決断し、そしてそれを実践するのは起業家自身であることを、いかなる時も忘れないでください。