守るものがあると人は弱くなる?

人は、守るべき大切なものが出来ると、強くなると言われます。

失うものがない人より、守るものがある人のほうが強いとも言われます。

「あなたがいるから強くなれる」などという、ラブソングの歌詞に出てきそうなセリフは、まさにそれ故でしょう。

一方で、全く逆のことも言われたりします。

すなわち、人は、守るものが出来ると弱くなってしまうというものです。

例えば、結婚して、子供が出来ると、若い頃のような人生の冒険は出来なくなると言われます。

何においても保守的になり、文字通り「守りに入った」などと周りから囁かれることになるのです。

深刻な命取りとなる可能性

さて、ここで、正解はどちらなのか、すなわち、「人は、守るものがあると強くなるのか?弱くなるのか?」などということを論じて、その問いに答えを出すつもりはありません。

ただ一つ言えるのは、事業運営や経営に際しては、後者であることが圧倒的に多いということです。

すなわち、起業家や事業主として、守るものがあるという状況は、大いに弱点となり得るのです。

そしてそれが、成功に向けた道のりにおいて、深刻な命取りになってしまうことが多々あるのです。

守るものは捨てるのが難しい

ここで言う、起業家の「守るもの」とは、配偶者や子供のことではありません。

もちろん、様々な観点から突き詰めれば、それも含まれてくることもあるでしょうが、今問題にしたい「守るもの」とは、「うまくいっている現在の状況」とか、「売れている商品やサービス」とか、「核となっている事業」とか、そういうことです。

起業家として、いかなる状況においても、これを捨てるという判断を下すことは非常に難しいでしょう。

進歩的な判断が出来なくなる

これは、起業家としては、至極当然のことです。

起業家は、売上が落ちたり、築き上げた資産を失ったりすることが、何よりも怖いからです。

とはいえ、それを守りたいが故に、革新的・進歩的な判断が下せなくなってしまうのは、起業家として致命的とも言えます。

にも拘わらず、多くの起業家は、守るものが生まれた途端に、それを守ることのみを考え、非常に保守的になってしまうのです。

保守的であることは大きなリスク

特に、昨今のように時代の流れるスピードが速く、日々の変化に対応することが最も重要な事業課題・経営課題であるような状況においては、保守的であることが最も大きなリスクであるといっても過言ではありません。

そんな時代には、常に攻め続け、新しい状況に対応するのが、起業家としての正しい態度なのです。

その過程においては、今ある一時的な成功(=売上)や、古くなった資産は、思い切って捨て去るというドラスティックな判断も時に必要となるのです。

厳しい判断が出来るのは起業家だけ

とはいえ、今ある売上や資産を守るために、リスクヘッジを含むあらゆる手立てを講ずるのは当然のことです。

それを決して否定するものではありません。

ただ、今あるものを一旦でも捨てる覚悟で、新しいものに目を向けるという選択肢を考える余地が全くない状態では、発展などとても望めないでしょう。

捨てるという判断は非常に勇気がいるものですし、大変厳しい、難しいものであることは間違いありません。

しかしながら、それが出来るのはトップである起業家しかいないのです。

だからこそ起業家は大変で、辛くて、苦しくて…だけど何物にも代えがたいくらい面白くて、奥が深くて、やりがいのあるものなのです。

「過去の経験」を捨てられるか

最後にもう一つ、起業家が頑なにそれを守ろうとするが故に、不利な状況に陥ってしまうケースが多いというものがあります。

それは、「過去の経験」です。

特に、過去にいわゆる「出来る人」と言われていたり、他よりも抜きんでた業績を残すなど数々の栄光に輝いたりした人ほど、それにこだわってしまうことで、保守的になり、自らの視野を狭め、可能性を閉じ込めてしまうことがあります。

例えば、サラリーマン時代の営業経験で、「売上全国No.1」とか、「月間販売数新記録樹立」などといった素晴らしい実績を残してきた方は、その最たるものかもしれません。

そしてそもそも、若い頃から独立心が旺盛で、いざ起業に踏み切るような方には、そういう出来る人や、数々の栄光をお持ちの人が多いというのもまた事実なのです。

要するに、それなりのプライドをお持ちの方が多い故、そのプライドが邪魔をして逆に可能性を拡げることが出来ずに、起業家としては悶々とするばかりで、いつまでも小さくまとまってしまっているという人が少なくないのです。

素晴らしい実績を残し、栄光を掴んできたという過去の経験があればあるほど、そういう傾向が強くなるというのは、何とも皮肉なことです。

起業家は、何物にも代えがたいくらい面白くて、奥が深くて、やりがいのあるものであるとは上述した通りですが、実はその一方で、何とも皮肉で、理不尽なものであるとも言えそうです。

なお、当節の内容は、以下の過去ページにおいてさらに詳しいので、ぜひご参照くださいませ。

※参考
→「経験にこだわりすぎない」
→「過去の栄光はリスクにもなる
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