前回、仕事場における整理整頓についてあれやこれやと考察しました。
その際にも触れた通り、私の経験では、仕事の出来る人間のデスクやオフィスは、スッキリと整理整頓が行き届いていることが多いという印象があります。
※参考 →「出来る人間の仕事場は、やはり整理整頓されているのか」
しかしながら、結局は、仕事場、すなわち物理的な空間をどれだけ整理整頓しようとも、抱えているタスクはもちろん、仕事に臨む気持ちや精神状態が、きちんと整理されてスッキリしていないことには、決して生産性や進捗も優れたものにはならないのだろうと考えます。
極論的に言い換えれば、雑然と散らかっている仕事場で極めてクリエイティブな仕事をしていたスティーブ・ジョブズさんの例を再び挙げるまでもなく、自らのタスクや脳内の思考回路がそつなく整理されているのであれば、物理的な空間はどんなに汚かろうが、散らかっていようが、私は構わないとも思っています(本当に極論ですが(笑))。
実際、モノが少なすぎるのは何だか落ち着かないと、整理整頓が行き届いているスッキリとした空間を、極端に嫌う方というのが少なからず存在します。
そういう人は、多少散らかっている雑多な空間のほうが、落ち着いて仕事が捗るという訳です。
つまるところ、デスクや仕事場といった物理的な空間を含めて、自らが最もパフォーマンスを発揮出来る環境やスタイルを確立しているのであれば(そして、それによって結果を残しているのであれば)、周りの誰からも文句を言われる筋合いなどはないということです。
物理空間と精神状態はシンクロする
しかしながら、これほどまでに物理的空間における整理整頓が話題となり、「整理収納アドバイザー(あるいは整理収納コンサルタント)」といったいわゆる「整理整頓のプロフェッショナル」までもが世の中に存在するのは、結局、物理的な空間と、精神状態や脳内の思考回路とが、シンクロしてしまう人が多いからなのでしょう。
上に挙げた前回の記事でも触れていますが、整理整頓されていない雑然とした環境がストレスを生み、集中力や注意力を散漫にさせたり、パフォーマンスを低下させたりしてしまうということは、専門家の研究においても、多くの人間において見られる傾向であることが明らかになっているのです。
とはいえ、世の中には片付けても片付けてもすぐに元通りに戻ってしまう人や、なかなか掃除の時間が取れずに雑然とした状態を看過してしまっている人というのが大勢います。
特に起業家などは、忙しさにかまけて後者のケースに陥っている方が多いのではないでしょうか。
そこで、私の考える起業家の効率的な整理整頓のやり方について、簡単に触れておくことにします。
それによって、ひいては仕事上のタスクやメンタルに関してもスッキリと整理することが出来れば、言うことはありませんよね。
記憶という引き出しを利用する
…とはいっても、それほど大袈裟なものでは決してありません。
整理整頓の肝は、よく「捨てること」であると言われています。
昨今は、「断捨離(だんしゃり)」といった、不要なモノを断ったり捨てたりする生活術まで、大きな話題となっています。
なんてことはありません、私の考える整理整頓のポイントも、基本的にはそこに尽きます。
とはいえ、「いつか必要になるのではないか」「そのうち役に立つのではないか」などと考えてしまい、なかなかモノが捨てられないという人は多いですし、実は私もその類いの人間でしたので、その気持ちは痛いほどよく分かります。
では、どうしたら良いかというと、「捨てようかどうしようか」と迷ったものに関しては、片っ端からその内容を覚えてしまうのです。
起業家が片付かないモノの多くは、書類や資料、あるいは書物といった類いでしょう。
要するに、そういったものを片っ端から、「記憶という頭の中の引き出しに、しまってしまえばいい」のです。
そして、内容を覚えた上で、思い切って捨ててしまうのです。
中には、そんなに簡単にすべてを覚えられないようなもの、例えば、分厚くて、かつ細かい内容の資料などもあるかもしれません。
しかしながら、だいたいそういうモノであっても、「捨てようかどうしようか」と迷った時点で、その内容はこの先大して必要にはなりません。
バーッと一度流し読みして、大枠の内容を覚えた(あるいは思い出した)上で、捨ててしまっても大丈夫でしょう。
これは私の経験上、ほぼ間違いのないことです。
また、内容を記憶したところで、後々まで覚えていられる自信がないといったケースもあるでしょう。
これも私の経験上ですが、そうやって覚えていられない内容など、間違いなくプライオリティが低いものです。
この先、万が一その内容を必要とする時が訪れて、その際に詳細を忘れてしまっていたとしても、大した問題ではありません。
要は、それくらいの「大胆な割り切り」が必要だということです。
起業家とはすなわち、起業という大きなイベントに一念発起して踏み切った人間なのですから、そして、ビジネスという厳しい戦場において自らの責任で鋭意突き進むことを決意した戦士なのですから、今さらこの程度のことを大胆に割り切ることが出来ないはずはありません。
再度繰り返します。
起業家の整理整頓に、小難しいテクニックなどは、全く必要ないのです。
大胆に割り切ること。
記憶という頭の中の引き出しに、しまうこと( = 捨てること)。
これだけで、大いに進展させることが出来るはずなのです。