不安やストレスと上手に付き合う

政治が混迷し、年金問題等で将来の保障もままならず、経済的にも社会的にもそこここに閉塞感が漂っている近年、さらには社会環境の変化によって生活様式が一変し、あらゆる物事がかつてないスピードで変革を続けている昨今、起業家に限らずサラリーマンの方であっても、ひいては学生や専業主婦などビジネスに直接携わっていない方であっても、ストレスと全く無縁であるという人は皆無なのではないでしょうか。

総じて、常に時間に追われ、慌ただしく日々を生き抜いている現代人にとって、この「ストレス」とどう向き合うかということは、非常に困難でありながらも喫緊の課題であると言えます。

一昔前までは、精神科医や心療内科医などの専門家を通さなければ簡単には手に入れることの出来なかった、抗不安作用のあるような向精神薬の類いも、今や市販薬やサプリメントといった形で、割と馴染みのあるものとなっています。

それほどまでに、ストレスというものが社会に蔓延し、一般的になってしまった時代である、とも言えるのかもしれません。

世間の理解は進んだものの…

抗不安作用とか向精神薬とか言ってしまうと、何だか少し身構えてしまいますが、そこまで大袈裟に考えなくても、気が滅入ったり、不安な気持ちがよぎったり、なかなかモチベーションが上がらなかったり、といったことは、多くの方が時折経験していることであると思います。

これらの経験が時折であるうちはまだいいのですが、段々と頻度を増し、ついには恒常的なものとなってしまうと、いよいよ過度なストレスとなって、鬱病など精神的な疾患への道を突き進むことになります。

今や、そういった状態を怠惰や無精などの一言で短絡的に片付けてしまうようなことは随分と少なくなり、社会問題として取り上げられるほどに世間の理解が進みましたが、それでもそれに対する適切な予防や対処となると、まだまだその知識やノウハウが十分に認知されているとは言い難い状況です。

起業家は、ストレスがビジネスに直結する

特に、起業家ともなれば、日々の不安やストレスとどう付き合い、それらを如何に溜め込まないようにするかというのは、ビジネスの成否にダイレクトに影響する重要な課題です。

ストレスというものは、単純に「思い込み」や「気のせい」といった問題ではなく、間違いなく本人の行動に大きな影響を及ぼすからです。

そのため、起業家が過度なストレスを抱えることは、ビジネスの収支が悪化の一途を辿る要因に十分なり得ることでしょう。

さらにそれが進行し、鬱病などの精神疾患にかかったり、肉体的な発露となって内臓などを患ったりすれば、もはやビジネスどころではありません。

払拭するのではなく、上手に付き合う

起業家が襲われる不安や、そのプレッシャーの大きさについては、今さら触れるまでもないでしょう。

大事なのは、それらに決して屈することなく、上手に付き合うための対処やアプローチを、常に意識して行うということです。

注意していただきたいのは、そういった不安やプレッシャーを完全に払拭しようとするのではなく、「上手に付き合う」ように心掛けることです。

起業家である限りそれらからは逃れられないものであり、完全に払拭出来るものでもないからです。

それらを完全に払拭しようと真正面からぶつかってしまうと、なかなかそれが達成出来ないという現実が新たなストレスとなって、いわゆる負のスパイラルに突入します。

そうなってしまってはもはや最悪なのです。

対処やアプローチは様々な方法が

いずれにせよ、起業して走り出したからには、不安やストレスとどう向き合い、如何に付き合っていくかということが、ともすれば他の環境や立場に置かれている人たちよりも、際立って重要な課題となってくるはずです。

意識して体を動かすことによって発散したり、同じような経験をお持ちの先輩起業家に相談したりと、様々な対処法やアプローチ法があるでしょう。

今や、まさに不安やストレスをテーマとした講義やセミナーなども花盛りですから、良さそうなものを選んで参加してみるというのも一つの手かもしれません。

ただ、間違っても怪しい壺などは買わないように(笑)。

不安やストレスと上手に付き合い、それらをビジネス推進のための前向きなモチベーションにまで昇華させることが出来れば、あなたの起業が成功する確率は、飛躍的に上昇することと思います。

今こそメンタルヘルス対策を

ところで、少し前の話になりますが、メンタルヘルス対策の充実や強化などを目的とし、従業員数50名以上のすべての事業所に対し、ストレスチェックの実施を義務付ける法律(「労働安全衛生法の一部を改正する法律」、いわゆる「ストレスチェック義務化」)が施行されました。

これにより、いよいよ(やっと)国をあげて本腰を入れ、ストレスとの付き合い方やその対処、ビジネスに与える影響などを考える時代が、ようやく到来したのではないかと考えた人も多かったのではないかと思います。

一部評論家などの間では、もはや遅きに失するといった厳しい見解もあったようですが、批判ばかりしていても決して前には進めず、まずは国が決して少なくない予算と時間を費やして、対策強化に乗り出したことを評価し、謙虚に受けとめておきたいところです。

当局がここまで大々的に周知と啓蒙に力を入れている背景には、個々の事業所におけるストレス状態の淀みや、それに端を発するメンタルヘルスの障害が、数多く積み重なることによって、ひいては国としての多大なる経済損失に繋がってしまうことが大きな要因としてありましたが、それは言い換えれば、個々の事業所(個人事業主や、起業家自身を含む)においてストレスを放置し、高を括って対策を講じないでいることが、ゆくゆくは大変なビジネス上の損失を被り、事業運営の根幹を揺るがしてしまうような大きなリスクとなり得るということなのです。

ただ実は、ビジネスによって生じるストレスに、これといった特効薬はないとも言われています。

つまり、あらゆるストレス解消法をもってしても、それでビジネス上のストレスをゼロにしたり、置き換えたりといったことは、そもそも実際には出来ないことなのだそうです。

やはり結局は、上でも説明した通り、ストレスを完全に払拭しようなどと考えるのではなく、それと上手に付き合っていこうとすることが、極めて大事であるということなのです。

先のストレスチェック義務化については、従業員数50名以上の事業所が対象であり、それ以外については当面の間は努力義務とされていました。

しかしながら、たとえ従業員数が50名に満たない場合や、個人事業主の場合であっても、厚生労働省のストレスチェック制度に対する考え方やそのエッセンスは、ストレスと上手に付き合っていくことを考える上で、大いに参考になったはずです。

たとえ小規模な組織や企業、個人事業主であっても、ストレスチェック制度の意図やエッセンスを理解し、採り入れられるところは採り入れてみるなど、変革のスピードが激しい昨今、改めて、自分自身、あるいは抱える従業員についてのメンタルヘルス対策を、真剣に考えてみることをオススメいたします。

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