「ファインプレー」というと、どうしても野球を思い浮かべてしまう方は多いかと思います。
中でも、守備におけるダイビングキャッチや、内野陣の見事な連携プレー、外野から本塁への矢のような送球(イチロー選手のレーザービームは有名でしたね)など、まさに見る者を酔わせる素晴らしい美技には、感嘆の声をあげずにはいられません。
ただ、当然のことながら、野球だけでなく、他のスポーツにも「ファインプレー」はあります。
例えば、サッカーにおける、何人ものディフェンダーを一瞬にして抜き去るドリブル&フェイントや、何十メートルもの遠くから鋭いキックでゴールを決めてしまうロングシュートなども、もちろんファインプレーでしょう。
ゴルフのホールインワンだって、もちろん素晴らしいファインプレーです。
その他、バスケットボールでも、ラグビーでも、テニスでも、バドミントンでも、卓球でも、空手や柔道、相撲にだって…。
あらゆるスポーツに、ファインプレーは存在するのです。
いずれにせよ、ファインプレーには、周りの人を驚かせ、感動や興奮を呼び起こす力がありますよね。
ファインプレーに否定的な意見
さて、一方で、ファインプレーに対して、こんなことを言う人がいます。
「ファインプレーでなく、普通のプレーのように見せながら、凄いことをやるのが本当に凄い人だ。すなわち、万全に準備するなど、常にファインプレーなどする必要がない状態にある人が本当に凄いのだ。」
「難しいことを難しそうにやることは誰にでも出来る。凄いのは、難しいことをいとも簡単にやって、周りにファインプレーだと気付かせない人である。」
「偶然に生まれるのがファインプレー。必然に生まれるのが堅実なプレー。」
,etc,etc,etc…
いかがでしょうか。
恐らく、言いたいことや反論がたくさんあるという人も、多いのではないでしょうか。
ただ私は、細かい言い回しに微妙な部分があることは認めつつも、これらの言葉が言わんとするところ、要するにその趣旨については、大いに理解出来るというのが正直なところです。
確かに、これらの否定的な意見を、スポーツにおけるファインプレーについてだけのものとして考えてしまうと、いささか論理が飛躍しすぎていると言わざるを得ないかもしれません。
しかしながら、ファインプレーとは、スポーツだけでなく、ビジネスや日々の生活においても使われる言葉です。
タイミングを得た見事な行動や、窮地を脱する救済行動などは、まさに「ファインプレー」と呼ばれることがあるのです。
そこで、これらの意見を、我々の主戦場であるビジネスにおけるファインプレーについて言っているものと考えてみると、納得が出来る部分も出てくるのではないでしょうか。
ビジネスの基本にファインプレーはない
ビジネスは、明確な計画や目標を立て、それに従ってコツコツと堅実な努力を積み重ねることによって、利益を生み出していくというのが基本です。
その中で、ファインプレーが発生するということは、ある意味では確かに「偶然」であるし、裏を返せば「予想外」「計画外」であるということです。
要するに、自らのコントロール外のところで発生した事態ということです。
起業家としては、ファインプレーを喜んで無条件に受け入れるだけではなく、これらのことを慎重に考えてみるべきです。
ビジネスの基本に、ファインプレーなどないということです。
「一攫千金」というファインプレー
例えば、先日言及した、「一攫千金」についても同じことが言えるでしょう。
※参考 →「一攫千金に注意せよ」
上で挙げたページとは少し趣を変えて、今回はファインプレーという観点から、一攫千金というものを考えてみます。
必ず売れると自信を持って送り出した商品やサービスが、予想通りヒットすることによって大きな売上を手に入れる、という形の一攫千金であれば構わないかもしれません。
ただ、一か八かで、あるいはそれほど期待をかけずに世に公開した商品やサービスが、たまたま当たってしまい、思わぬ大金が転がり込んだという形の一攫千金であれば、それはまさにファインプレーであり、要注意であるということです。
その理由の一つは、厳しい言い方をすれば、それは全くもってビジネスではないからです。
一か八かで勝負したらたまたま当たったとか、期待はしてなかったけど運良くヒットしてしまったとか、それはまさに、博打(ばくち)以外の何物でもありません。
博打で当たることがずっと続くほど、ビジネスは甘いものではないのです。
繰り返しになりますが、ビジネスの基本は、明確な計画や目標を立て、それに従って堅実な努力を積み重ねることです。
優れた起業家であるほど、そこに博打の要素は全くないのです。
そして、理由のもう一つは、それによって勘違いが生じやすく、以後の事業運営に影響をきたす恐れがあるからです。
過去の記事においてもそこここで繰り返し述べておりますが、人間というのは本当に弱いものです。
どんなに芯が強く、確固たる意志を持っていると思われる人間であっても、思わぬ一攫千金を手にした途端、それが「自分の実力である」との思いが頭の片隅によぎることがあります。
もちろん実力などではなく、上述した通り、たまたま博打に当たっただけなのですが、ともすればそれが分からなくなってしまうのです。
その勘違いがどんどん大きくなってしまうと、自信過剰、あるいは自己の過大評価という状況に陥って、独りよがりの事業運営へと発展していきます。
これはもう、起業家としては致命的です。
こうなると、あとは凋落への道をひた走るだけです。
喜んでばかりはいられない
ファインプレーは文字通り、素晴らしいものです。
当事者としては大変嬉しく、誇らしいものですし、周りの者を酔わせ、喜ばせる力があります。
決してこれを否定するものではありません。
しかしながら、起業家としては、ファインプレーが発生した時こそ、その背景を慎重に探り、計画外の事態を懸念するべきです。
ファインプレーを、喜んでばかりはいられないということです。
「仕事が増えた」と考えるべきなのです。
ましてや、そもそもファインプレーに頼らざるを得ない状況であった場合などは、大いに憂い、考える必要があるでしょう。さらに言えば、こともあろうに、ファインプレーを自分の実力であるかのように勘違いしてしまうような起業家は、もはや論外です。
そういったあらゆる意味で、起業家にとって、「ファインプレーには要注意」なのです。