ビジョンを難しく考え過ぎない

企業などの組織運営において、あるいは個人のビジネス観や人生の話においても、「ビジョン」がどういうものであるかということは、しばしば俎上に載せられますよね。

「うちの会社のビジョンは…。」
「私の人生のビジョンは…。」

…などといった具合で、会話にも登場してくる訳です。

いわんや起業家においては、ビジョンを明確に持っているかどうかということが、成否に大きく影響するファクターとして取り上げられます。

ビジョンのない起業など成功するはずがないと、明確に言い切る専門家も多いようです。

また、ビジネスにおいて情報や資金を集め、人を惹き付けるためには、ビジョンが崇高でなければならないと仰る人もいます。

要するに、それほどまでにビジョンというものが重要であるということなのですが、実際には、これを自ら明確に語れる起業家は、それほど多くなかったりします。

インターネットによる情報社会化の進展によって、あらゆる情報収集が割と容易に可能であることや、元手がそれほどかからずリスクも少ないと言われているネットビジネスの台頭などにより、昨今は起業すること自体のハードルが大きく下がっており、「とりあえず起業」といった人も多くなっている実状では、それもやむを得ない気がします。

誰でも何がしかのビジョンはあるはず

実は私自身も、ビジョンというものをあまり小難しく考えてはおりません。

それは決して、ビジョンの意味やその重要性を軽視しているという訳ではありません。

もちろん、起業においてビジョンなんかなくても良い、と明確に宣言するつもりもありません。

しかしながら、そこを難しく考えすぎて停滞してしまうよりも、ワクワクするために思考を巡らせたり、とにかくとりあえず行動してみたりと、そういったことに目を向け、注力したほうが良いと思うからです。

それは、私の過去のコラムを読んでみても、お分かりいただけるかと思います。

※参考
→「多くの人がネットビジネスに行き着く理由
→「ワクワクするということ

…というよりも実際は、うまく語れなかったり、きちんと整理出来ていなかったりということはあれど、起業に踏み切るような方においては、何がしかのビジョンを自然とお持ちのはずなのです。

そもそもビジョンとは

そもそも、ビジョンとはいったい何なのでしょうか。

それは、将来のプロスペクトや未来像、すなわち組織や個人などが目指すべき姿のことです。

行く行くはどうしたいのか、どうなりたいのか、といった望むべき将来像です。

旅行でいえば、目的地のことです。

そう考えると、たとえ漠然としたものであっても、何となくであっても、これをお持ちでない方のほうが少ないのではないかと思います。

もちろん、目的地をあえて定めずに、ふらっと旅に出る…といった方もいらっしゃらない訳ではありませんが、何のために旅に出るのか、何を求めて旅に出るのか、何がしかそういったものは持っているはずです。

それは、自らの思うがままに自由を謳歌する…といったことと大きな相違はなく、いわば「究極の自由」といったユートピアが目的地であるとも言えるかもしれません。

いずれにせよ、ビジョンを定めるにあたっては、自らに正直であればいいだけであって、小難しく考える必要はないのです。

ビジョンそのものよりも一貫性が大事

ただ、ビジネスにおいて重要となる戦略戦術は、このビジョンへと繋がるものであるため、それらすべてが一貫したものでなくてはなりません

逆に言えば、ビジョンと、そこから生まれる戦略や戦術に整合性がなく、ちぐはぐになってしまうと、成功の可能性が大きく遠のくことになります。

つまり、ビジョンの内容そのものよりも、それに向けた思考や行動(すなわち、戦略や戦術)をも含めた上での一貫性が大事であるということなのです。

ビジョンは旅行でいう目的地のことと申しましたが、例えば、海外である「ブラジル」という目的地(ビジョン)に対して、「クルマのみを使ってとにかくかっ飛ばす」といった戦略や戦術を打ち立てたところで、到達の可能性はほぼゼロです。

まず、クルマでは海を渡れませんし、だからと言って、ブラジルまで陸続きとなるよう橋を造るにしても、それは非常に実現性に乏しいと言わざるを得ず、別の戦略や戦術を考察したほうが間違いなく賢明でしょう。

要するに、起業家として、ビジョンはもちろん大事かもしれませんが、それをあれこれ難しく考えすぎるよりも、成功に向けて思考や行動の一貫性を図ることに注力したほうが、得策であろうということです。

※とはいえ、少し矛盾しているように聴こえるかもしれませんが、「クルマでは海を渡れないから、ずっとクルマをかっ飛ばしてブラジルまで到達することは100%不可能だ」と考えてしまうよりも、「クルマでは海を渡れないなら、ブラジルまで陸続きにしてしまえばいい」といった、ともすれば突飛とも思われるその思考は、起業家としては非常に大事なものであると考えられます。

初めから無理だと決めつけず、無茶と言われようが荒唐無稽と思われようが、わずかでも可能性があればまずは検討してみる…そんな姿勢も必要なのです。

もちろん、時間や資金といったリソースなどを総合的に加味し、その実現性を鑑みて、どこかで厳然とした判断を下す、すなわち現実との折り合いをつける…といったことは必要になってくるでしょう。

そしてそれが、ビジョンとの一貫性を図るということにも繋がってくるのかもしれません。
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