先日言及した、失敗など恐れないフットワークと、そこから生まれるスピード感やダイナミック感が大事であるという話。
テレビショッピングの雄、「ジャパネットたかた」や、その創業者である高田明さんを例に挙げさせていただき、ぜひとも起業家として見習いたい部分が多いことに触れました。
※参考 →「フットワークの良さが決め手」
では、いつどんな時でもフットワーク良く動くためには、高田さんがおっしゃる「これが最高なのだろうか?これ以上出来ることはないのだろうか?」といった常にベストを尽くす姿勢の他に、何が必要になってくるのでしょうか。
すなわち、高田さんが持ち合わせていたような魂、いわばメンタル面での条件が必要である一方で、もっと実務的に、あるいはよりビジネス的な観点から言えば、どういったことが条件となって、フットワークの良さというものが生まれてくるのでしょうか。
自らの商品やサービスを熟知すること
前項の問いかけに対して、小見出しでいきなり答えを明かしてしまいましたが、ビジネス的な観点から言及すれば、自らの商品やサービスについて熟知していないと、なかなかフットワーク良く動くことが出来ません。
失敗を恐れず行動するためには、それなりの裏付け、つまり、自らに対する相応の自信が必要となるからです。
そして、起業家が自らの事業推進において自信を持つためには、当然のことながら、まず自らが扱う商品やサービスについて、隅々まで把握している必要があります。
ジャパネットたかたの高田さんが、これを身をもって証明していたという一つの例として、実はこんなエピソードがあるのです。
昨日も言及した、同社によるテレビショッピング番組での失敗事例。
有名なところで、火災を感知する蛍光灯の紹介における失敗というものがあって、その日は、煙を感知して警報音と共にその蛍光灯が点灯する様子を、高田さんが実演して伝える予定でした。
ところが本番(生放送)で、高田さんがいくら煙(スプレー)を吹きかけても、この蛍光灯が一向に点灯しない。
高田さんご本人はもちろん、それを見ていたスタッフさんたちの心臓の鼓動は、察するに余りあるでしょう。
しかしながら、当の高田さんは一向に慌てることがありませんでした。
早々にこれがこの商品の特徴の一つであることに気付き、「失礼いたしました」といった謝罪と共に、「一度作動すると、その後10分間は煙に反応しないようになっている」という機能を説明し、見事にその場を乗り切ったのです。
事前に試さないということは考えられませんから、恐らく、実演直前にテストを行い、その時はきちんと点灯していたのでしょう。
そして、そのテストから、まだ10分が経過していなかったという訳です。
高田さんのこの対応は、視聴者から絶賛され、高田さん自身はもちろん、ひいてはジャパネットたかたという会社に対する世間の信頼感が、一段と増したのです。
これは、自分が紹介する商品の機能や特徴をしっかりと勉強し、把握していたからこそ可能だった訳で、もしそうでなかったら、視聴者のその商品に対する信頼を大きく損なうだけの結果となったでしょう。
事前に自分のやることだけを確認して済ませてしまうとか、部下の用意した台本をただ読むだけとか、そういった姿勢であっては絶対に不可能であることがお分かりいただけるかと思います。
ひいては、何があっても臨機応変に対応出来るジャパネットたかたのフットワークの良さは、トップである社長(当時)自らが身をもって示す、こういった努力の積み重ねから生まれてくるのであろうということが理解出来るはずです。
自社を知らない経営者たち
驚くべきことですが、自社の商品やサービスを含め、自分の会社のことをほとんど知らないトップ(経営者)というのは、実際に存在します。
それも、それほど珍しくはありません。
信じられないことかもしれませんが、それが事実なのです。
起業家としてゼロから会社を立ち上げた経営者であれば、それほど多くは見られない事例ではありますが、それでも組織がそれなりに大きくなってくると、全く見られない訳ではありません。
そんな状態では、フットワーク良く動くことなどもちろん出来ませんし、そういった話云々は抜きにしても、それがトップとして言語道断であることは、もはや言うまでもないでしょう。