時間に対する起業家思考

フィーチャーフォン(いわゆる「ガラケー」)が全盛を極めたモバイル市場も、今やスマートフォン(スマホ)が完全に主流となりました。

特にiPhoneの新型がひとたび発表されれば、その度に世界的なお祭り騒ぎが巻き起こり、イノベーターあるいはアーリーアダプターと呼ばれる新商品市場を牽引する人たちのエネルギッシュな行動に、ただただ感心させられるばかりです。

このお祭り騒ぎ、日本でも、販売が行われるアップルストアには発売日の数日前から泊り込みをする人たちが現れ、場所によっては1,000人以上の長蛇の列が出来るなど、毎回大きな話題となっています。

最近では、各キャリアによって予約販売が実施され、予約さえしていれば発売日当日に確実に新型iPhoneが手に入れられるようになったため、以前のような大行列やお祭り騒ぎはあまり見られなくなってしまったようですが…。

日本人は行列好き?

さて、新型iPhoneの販売しかり、あるいは福袋が目玉のお正月大バーゲンしかり、はたまた話題のラーメン屋さんしかり…。

行列と聞いて、イメージ出来るものが日本にはたくさんありますね。

日本人は行列が好きで、長い行列を見ると思わず並びたくなってしまう人種と言われており、外国人の方の中には、その光景を心底不思議に感じていらっしゃる人も少なくないようです。

上述した通り、中には「我先に」とばかり、何日も前から寝袋持参で泊り込みをする人すら珍しくはなく、そこにかける意気込みとその行動力には、本当に頭が下がる思いです。

起業家はあの行列に並ぶか

ただ一方で、そういう方たちの時間に対する感覚はどのようなものなのだろうかと、どうしてもビジネス目線で少し疑問に思ってしまうことも確かです。

泊り込みの人たちを含めたあの大行列の光景を見て私がいつも思うことは、「この中に起業家や経営者の方はどれくらいいらっしゃるのだろうか(恐らくいらっしゃらないだろう)」ということなのです。

要するに、時間というリソースが何よりも貴重で何よりも重要な起業家であれば、何時間も、ともすれば何日間も、ただただあの行列に並んで時間を過ごすことが、いったいいくらのお金に換算出来るのかということを、考えてしかるべきだと思うのです。

それが、紛れもない、「起業家思考」だからです。

昼食をコンビニで済ませる起業家

手掛けた事業が大いに隆盛を極めているという、若き精鋭の起業家がいます。

その方、昼食はいつもコンビニ、あるいは出前で済ませてしまうそうです。

毎日毎日、食事の時間も満足に確保出来ないほど忙しいから、といったことが理由ではありません(もちろん、そういう日もあるのかもしれませんが)。

その気になれば、成功しているトップとして、ゆっくりと豪華な食事を楽しむことだって可能なはずです。

でも、それを全くしないのです。

その理由を伺ったことがあります。

曰く、レストランなどに行った際の、食事が提供されるまでの5分・10分が、たいそう無駄に感じられてしまうのだそうです。

その時間に仕事に打ち込むことで、いくらの機会損失を防げるか、と考えてしまうのだそうです。

たとえ1回につきたった10分であっても、1週間で約1時間、1ヶ月で約4時間…。

それがいくらのコストになるのかと考えると、忙しい業務時間の真っ只中に、悠長に外食などしていられない、という気持ちになってしまうんだそうです。

もちろん、人気のラーメン屋などに何十分も並ぶなんてもってのほかだとか(笑)。

まさに息も詰まるくらいの感覚で、あえて時間に追われながら仕事をしている訳ですが、それが良いか悪いかという議論は置いておいたとしても、この方がそういう思考で現在の成功を収めているということは、同じ起業家として間違いなく頭に留めておくべきでしょう。

勝間和代さんに学ぶ

勝間和代さんという女性の経済評論家の方を、ご存知の人も多いかと思います。一時期はテレビを始めとするメディアで見ない日はないというほど活躍していましたが、現在ではYouTubeでの動画配信にも注力しているようです。

勝間さんが様々なメディアで話をするのを聴いていていつも感心するのは、何事においてもすべてをお金や数字に換算して考える思考が徹底しているということです。

例えば、「数十円安いがために、数Km離れたスーパーまで時間をかけて買い物に行く」という行動に対し、「それは果たして得なのかどうなのか?」という疑問を常に持ち、その時間や労力などをあらゆる観点から数値化し、損得を割り出す…といった具合です。

あるいは、家の掃除をする時間も徹底して数値化・金額化し、その結果、お金をかけてでも自走式の掃除機(ルンバ)を購入し、それを使うことで、自らが掃除にかける時間をカットする…といった具合です。

日々愛用している日用品の値段なども、割り算して徹底的に1回あたりのコストを割り出してみるそうです。

そこにあるのは、1年を基準とした際、毎日使うものであれば365で割れるが、月に1回使うだけなら分母は12にしかならない…といった発想です。

経済評論家ならでは…とも言えるかもしれませんが、こういった数値化・金額化を徹底して行うその思考の根底に流れるエッセンスは、大いに起業家の参考になるものであると考えます。

時間をお金に換算する思考

ともあれ、成功している起業家は間違いなく、時間をお金に換算するという思考が徹底しています。

だからこそ、自己投資をして時間を買うといったことに、躍起となる起業家も少なくないのです。

お金を出して買い、手に入れた時間を、自らの活動に充てることで、「出資した金額以上のものを生み出せばいい」という考え方なのです。

決して、人気のラーメン屋さんの行列に並ぶことを真っ向から否定するものではありませんが、起業家たるもの、たとえ数十分という時間の使い方であっても、そういった発想で考えてみるべきなのかもしれません。

※参考
→「自己投資とは、時間を買うことである
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