前回、時間をお金に換算するという起業家思考についてお話をいたしました。
※参考 →「時間に対する起業家思考」
自己投資という名の下、自らの時間を捻出することにお金を費やすのは、特に成長過程にある起業家にとって、豪華な邸宅に住んだり、高級外車を乗り回したり、豪勢な食事に舌鼓を打ったりすることよりも、余程大切なことです。
起業黎明期から安定期にかけて、こういった起業家思考をきちんと持てるかどうかで、その後の成否が大きく変わってくると言っても決して過言ではありません。
逆に言えば、事業がある程度軌道に乗っていく過程において、手持ちの現金が徐々に増えてきた際、そのお金の使い方如何で起業家としての真価が問われてしまうものなのです。
目に見えるものを買い漁っていた起業家たち
とはいえ、目に見えないもの、姿形のないものに、お金を費やすことは、一定の覚悟と思い切りが必要です。
一般的に人間は、目に見えるもの、形の残るものに、お金を使ったほうが分かりやすいし、お金を払ったという行動の結果を実感しやすいので、どうしてもそのようなお金の使い方を優先してしまいます。
これは起業家であっても同じことで、事業がうまくいって手持ちのお金が増えてくると、どうしても高級外車を何台も揃えたり、豪華な邸宅やホテルに住んでみたくなったりします。
今以上に「ITバブル」「六本木ヒルズ族」などという言葉が跋扈し、騒がれていた時代に、若きITベンチャー起業家たちの豪勢な暮らしぶりが散々メディアでも取り上げられ、大いに話題となっていました。
中には、1泊数十万円もするホテルにずっと住み続けているような、まさにバブルも真っ青のお金の使い方をしていた方もいらっしゃいました。
今、彼らはどうなっているか。
もちろん中には、現在も事業を継続し、頑張っているという方もいらっしゃるでしょう。
しかしながら、ものの見事に凋落し、ともすれば多額の借金を抱えてしまっているという人が、決して少なくないのです。
それは、目に見えるもの、形の残るもの、もっと言えば、自らのステータスを分かりやすく誇示出来るものに、贅沢にお金を使い続けることで、起業家精神を忘れ、ビジネスの本質を忘れ、中身の伴わない一時の成功状態に浮かれてしまったが故の、必然的な結果なのです。
要するに、お金の使い方に関する思考や価値観が、起業家のそれではなく、一般的なそれと全く変わらなかったからなのです。
一般的な思考や価値観のまま、起業家として成功出来るほど、世の中甘くはないということなのです。
目に見えないものに価値を見出す
知識や情報というものは、時間をかけて努力しさえすれば、誰もが手にすることが出来ます。
しかし、そこで費やした時間というものは、その後どんなに努力しても取り戻すことは出来ません。
その時間をお金に換算し、損得勘定を計算の上で、思い切ってお金を使う、すなわち投資することが出来るかどうかが、起業家としての成功の分かれ目とも言えます。
要するに、時間をかければ誰もが得られる情報を、お金を払って短時間で購入することに、どれだけ意義を見出せるかどうかの勝負なのです。
言い換えれば、こういった目に見えないもの、姿形のないものに、どれだけお金を使えるか、ということ。
そして、そこで得た、目に見えないもの、姿形のないものを、その後どれだけ有効に活かすことが出来るか、ということ。
豪邸や高級外車などではなく、それを何よりも有益と感じる価値観が、まさに起業家が起業家であり続け、成功に近づくために必須となる、極めて重要なファクターなのです。
※参考 →「自己投資とは、時間を買うことである」