「フェルミ問題」という言葉があります。
ざっくり言えば、実際に調べようのない、あるいは調べるのが非常に困難で、即答することが大変難しい奇抜な問いかけのことです。
例を挙げればキリがありませんが、
- 「日本には何本の木が生えているでしょうか?」
- 「都内にはいくつの歩行者用信号があるでしょうか?」
- 「この森に昆虫は何匹いるでしょうか?」
- 「この部屋にゴルフボールはいくつ詰め込めるでしょうか?」
- 「日本全国で1日に飲まれるコーヒーは何杯でしょうか?」
- 「世界中で1日に読まれる本は何冊でしょうか?」
- 「たった今、この瞬間、世界中で何人がトイレで用を足しているでしょうか?」
などといったものです。
また、論理的な仮定や推論を用いて、これらを概算して答えを推定することを「フェルミ推定」といいます。
いずれも、イタリアの物理学者、エンリコ・フェルミさんの名を取ったもので、フェルミさんはそういった概算が天才的に得意だったそうです。
フェルミ問題でサバイバル力を見る
さて、一時期、こういったフェルミ問題を、企業の採用面接で求職者に出題することが大いに流行ったことがあります。
その答えの妥当性から、論理的思考力を測るという訳です。
しかしながらそのうち、その効果自体が疑問視されるようになり、今では下火となってしまいました。
ただこれ、トラブル発生などの予期せぬ事態に遭遇した際の反応を見定めるためには、私はある程度有効なのではないかと考えています。
つまり、答えはともかくとして、こういった奇抜な問いかけをされた時の反応に注目するのです。
下火になってしまったのは、答えそのものの妥当性に注目してしまったからで、答えが正しい正しくないに拘わらず、その切り抜け方を見て、その人の「サバイバル力」を判断するのは、一つの面白い方法ではないかと思います。
フェルミ推定における論理的思考
ところで、起業して事業を推進するにあたっては、どうしても予測が難しく、見込みや計画がなかなか立てられないといった局面に多く遭遇します。
とある商品の販売予測とか、オープンした店舗の来店客数とか、ひいては大枠の事業計画とか…。
まさに、答えるのが大変難しいものを何とか推論して答えなくてはならないという意味では、フェルミ推定における論理的思考の展開は、大いに参考になるかもしれません。
- この商圏の人口を○万人として…。
- そのうちのターゲット層を3分の1の○千人として…。
- そのうちの半分の人が月に1度来店してくれるとして…。
- 来店した人の2割が購入してくれるとして…。
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などとやっていく訳です。
もちろん、そもそもの前提をどう捉えて、どんな数値を設定するかによって、かなり結果が変わってくることになりますが、それらが過去のデータなどから分析したある程度根拠を持ったものであれば、実際の結果に近づけることも決して不可能ではありません。
ただし、最終的に導き出したい結果の内容に対して、掲げた条件やその手順が妥当であるかということと、希望的観測に即した都合の良い数値を設定してしまっていないかということは、フェルミ推定の核とも言えるほど極めて重要であり、そこは意識する必要があるでしょう。
いずれにせよ、少なくとも、「何となく」とか「勘で」などといったノリで考えるよりは、余程説得力のある答えが導き出せるはずです。
また、これを繰り返すことで、論理的思考力が大いに鍛えられることにもなります。
起業家として、こういった論理的な仮定や推論の仕方を身につけ、その力を鍛えておくことは、成功に向けたその後の道程においても、決して損にはならないでしょう。