起業の成功率に惑わされるな

起業の成功率に関する記事を、インターネット上のWebサイトにおいても、また、リアルな雑誌等においても、多く見かけます。

試しにGoogleなどの検索サイトでWebサイトを探してみれば、起業の成功率に関してあらゆる角度から分析・評論したり、論述したりしているサイト(記事コンテンツ)が、数え切れないほど存在している事実を即座に確認出来るのです。

実はこれ、昨今に限らず、かなりの昔から変わらぬ傾向であるような気がします。

  • 「起業の成功率は○○%」(6%と言われることが多いようです)
  • 「起業するとどれくらいの確率で成功出来るのか?」
  • 「成功率の高い起業はずばりこれ」
  • 「起業成功率を100%に近づけるためには?」
  • 「高い成功率!起業して確実に成功する方法」

,etc,etc,etc…

…と、概ねこんな具合です。

中には、

  • 「起業の成功率を高めるためのたった1つの方法」
  • 「起業の成功率が高い人が持つたった1つの特徴」

などと題するものも多くありますよね。果たしてその中身は、「成功するまで諦めない」の1点だったりします。もちろん、それはそれで真理なんですが…。

記事が多いということは、需要があるということであり、要するにそれだけ起業の成功率を気にする人が多いということの証左でもあります。

起業の成功率を気にする気持ちはよく分かる

確かに、これまで起業の実経験がなかったり、何度か失敗を繰り返したりしている人が、起業の準備段階において様々な情報収集を進める中で、成功率というものをどうしても気にしてしまうという気持ちは、非常によく分かります。

様々な角度から導出された成功率という数字を見て一喜一憂したり、少しでも過去の成功率が高い分野での起業を検討したりする人は、実際に後を絶たない訳です。

当サイトでも過去に「起業の6割が1年以内に倒産し、5年以内に8割が倒産する」といった一説があることに触れ、その厳しさを真摯に受け止める必要性を説いています。

※参考
→「起業して成功するということ

起業の成功率に囚われるのが賢明ではない3つの理由

これらの数値やデータが、適正な方法の下に導き出されているものであれば、それはそれで一定の意味を持つことは否定しません。数ある情報の1つとして、参考にするのも良いでしょう。

しかしながら、こういった成功率を示す数字に、過度に囚われてしまうのは、決して賢明ではありません。

その理由として、一つは、様々な統計やデータが乱立しており、どれがどこまで正確なのかということが誰にも分からないということ。

起業の成功率に限った話ではありませんが、特にインターネット上の情報というものは、誰でも手軽に公開することが可能であるため、出典や根拠が不明瞭なものも多く、どこまで信用していいのか分からないといった声は、昔から絶えることがありません。そして実際に、そのような側面があることは、決して否定できないのです。

もう一つは、ただでさえ不確定要素が多いビジネスの世界で、それを明確な数字で示すことに、果たしてどこまでの意味があるのかという疑問は決して拭えないということ。

たとえ数字で示されたその情報やデータがどんなに正確であっても、それはあくまで過去の実績からの統計であり、今後も同じ状況になるとは誰にも保証が出来ないものなのです。ましてや、現在のように激しいスピードで社会状況が移り変わり、とかく不確実性の高い時代においては、状況によっては過去の情報やデータが何ら意味を持たないことも珍しくはありません。

さらにもう一つ、何をもって成功とするかは人それぞれであり、成功という定義そのものが明確ではない中で、その確率を求めること自体に無理があるということ。例えば、起業して月商1億円を達成するというのは一般的には凄いことですが、まだまだそれが自身の目標には程遠い数字であり、それを失敗と捉える人がいたとしても、何ら不思議はないのです。

この件に関しては、当サイトでも過去に言及しましたので、ぜひご参照ください。

※参考
→「何をもって成功とするのか

要するに、そもそも曖昧で不明確なものに対して、さらにそれぞれが必ずしも同一でない基準や条件で導出しているため、個々のデータや情報の正確性はおろか、それらを互いに比較検討することの意味すらもはや明確に見出せないというのが、現実なのです。

起業の成功率に囚われるのではなく、高めるために努力する

誤解のないように言っておくと、少しでも成功率を高めるために、努力するということは大切です。

一般的に囁かれている「起業なんて誰でも出来る、最も難しいのは、それを存続することだ」という教えは、ある意味で間違いなく真実を突いているものと思います。

ただそれは、起業して、成功に向け目一杯走り続けることが重要であるという、もはや当たり前のことを示唆しているに過ぎず、成功率という数字に囚われることとは全く別のものです。

言い換えれば、仮に成功率が100%と言われている起業スキームがあったとしても、努力をしなければ100%失敗するだけです。

要するにその状態は、成功率が0%であることと等しいのです。

世に言われている成功率なんて、そんなものです。

逆に、成功率が低いと言われている業種やスキームで起業に挑戦するなら、努力によって、あなたにとっての成功率を100%にすればいいのです。

ただそれだけの話です。

経験のないことを悔やんでも仕方がない

「起業する前にこんなことをやっておけば良かった…」

「もっとこういった経験を積んでおけば良かった…」

…などといって、それによって成功率が大きく変わってくると思い込み、悔やんでいる起業家がいます。正直なところ、私の周りにも数多く存在します。

しかしながら、いざ起業して走り出してしまってからは、もはやあらゆる努力によって成功率を高める以外にはないというのは、起業前にどんな経験を積んでいようがいまいが、変わらない事実なのです。

確かに、例えばサラリーマンであることを特権として活かし、会社組織という環境を大いに利用して、ビジネスにおける様々な経験を積んでおくことは、起業家となってからも有利に働く可能性は高いでしょう。

また、巷では、まだ若い学生のうちに起業してしまうのと、一度就職してサラリーマン経験を積んでから起業するのと、どちらが成功しやすいのか、などといった議論も盛んに行われていたりしますが、経験値のある後者のほうが成功しやすいはずであるというのは、普通に考えられることではあります。

上司や先輩・同僚・部下や後輩といった様々な人間が様々な立場で、同じ組織内において身近に存在する環境での社会人経験というものは、あらゆる面で何物にも代えがたい、人間的にも成長出来るものだからです。

世の中には、例えばFacebook(Meta)のマーク・ザッカーバーグさんとか、ソフトバンクグループの総帥である孫正義さんなど、学生起業によって大きく成功した、世界的にあまりにも有名な人物も存在してはいるものの、実際には圧倒的に少数派のようです。

それはもちろん、学生起業する人自体がそもそも少ないといった事実に起因する部分もありますが、やはり経験の乏しさから、厳しいビジネスの世界に対する耐性が不足しているといった理由も大きいようです。

ただ、本当にそれ(起業前のサラリーマン経験)が全体の成功率に大きく影響しているのかというと、もちろん全くの無関係であるとは申しませんが、成功への道のりという長期的な観点から鑑みた場合、あくまで時間の問題にすぎないと言わざるを得ません。

確かに「時間」というものは、起業家にとって極めて大事なリソースであり、起業前の経験によってそれが短縮出来ることは、大きな武器となるでしょう。

しかし、起業前の経験の有無から生ずる「時間」というリソースの消費量の差は、上のページでも触れている自己投資などを含め、努力によって埋められないものでは決してないのです。

さらには、起業前のビジネス経験が大きな枷となって、逆に成功への可能性を狭めてしまうどころか、それが起業家としての致命傷になることすらあります。

要するに、サラリーマン時代のビジネス経験が豊富だからといって、誰もがその経験を起業後の成功率を高めるために活用出来るとは限らない、ということなのです。

言い換えれば、起業前の経験を活かすも殺すも、ひいてはそれを成功率の向上に寄与させられるもさせられないも、結局はやはり起業後の、本人の努力次第なのです。

そんな現実を前に、一つ間違いなく言えることは、起業前の経験が乏しいことを、今さらいくら悔やんでも仕方がないということです。

ましてや、それによって成功率云々などとあれこれ思案を巡らすなど、非常にバカげたことであると言わざるを得ません。

起業家(あるいはその卵)としてやるべきことはただ一つ、前に進むことだけなのですから。

成功率に左右される起業など成功しない

起業して、世界に名立たる成功者となった方々において、成功率などというものに強くこだわっていた人など恐らく皆無でしょう。

彼らが信じてきたのは自分自身のみであり、頼りにしてきたのは自らの努力であり、そんな数字にこだわることが何の役にも立たないことをよく知っているからです。

あえて厳しい言い方をすれば、信憑性すら怪しい成功率というものに惑わされ、その高低によってモチベーションや実際の行動が左右されるような起業であれば、決して成功などしないということなのです。

もし、あなたの起業に対する決意や志が、成功率などというものによって大きく揺らいでしまうのであれば、その起業に関しては間違いなく考え直したほうがいいでしょう。

そうでないならば、明確な意志と、確固たる自信を持って、突き進んでください。

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