ビジネスは拡大することがすべてではない

「大は小を兼ねる」と言います。

英語でも、同じような意味で「The greater embraces the less.」(embraceは「含む」「包含する」という意味)といった言い回しが存在するくらいで、この概念は世界共通であるのかもしれません。

しかしながら、ビジネスは拡大することがすべてではありません

特に、起業家として自由を求め、自らの再発見や自己実現を見据えてビジネスを興し、ただただその夢や希望に向かって情熱を傾けているような人であればあるほど、安易に拡大には走らないことが多いものです。

そういう人は、ビジネスを拡大して収入を増やしたり、規模によって社会における自らのプレゼンスを増したりすることが必ずしも目的とはならず、それ以外の部分に何よりも価値を見出し、重きを置いているからです。

つまりは、起業に決まりきった正解の形など存在せず、何をもって成功と定義するかは人それぞれ異なってしかるべきであるということです。

※参考
→「何をもって成功とするのか

個人事業主やフリーランスという形態のまま、頑なに長年それを続ける人もいます。

早々に従業員を雇って、短期間であっという間に事業を拡大させる人もいます。

どちらが良くてどちらが悪いという問題ではないのです。

拡大は手段であって目的ではない

この問題は、実際に活躍している、様々な業種や形態の起業家に問うてみても、見事に見解が分かれるところです。

ただ、事業を拡大させようがさせまいが(あるいは拡大を望もうが望むまいが)、いずれにせよそこには何らかの戦略や、将来に見据えたビジョンなどがあり、起業家としての明確な想いが作用していることは、ほぼ共通しているようです。

つまり、従業員を定期的に増やすなど、拡大路線を採る起業家であっても、ただ闇雲にそうしている訳では決してなく、ほとんどの場合それは必要に応じた拡大であるということです。

拡大することはあくまで手段であって、目的とはなっていないということなのです。

  • 断らざるを得ないクライアントからのリクエストがあまりに増えてしまい、それに応えるために従業員を増やしたというケース。
     
  • 一人ではあまりに忙しすぎて全く時間が作れず、限界を感じ、たまりかねて人を雇ったというケース。
     
  • 起業家としての目的や野望と、自らのビジネスの拡大が、そもそもシンクロせざるを得ないものであったというケース。

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その事情は様々ですが、拡大することが起業家としての判断による確固たる選択であったことは、どれも間違いがなさそうです。

あえてスモールビジネスにこだわる起業家

一方で、あえてスモールビジネスのまま、自分一人の自由気ままなビジネスであり続けるという選択をしている人もいます。

  • 人を雇うことで、結局は自らが仕事を遂行するのと同じか、あるいはそれ以上に管理工数が割かれてしまったという経験から(もしくは、それを懸念する気持ちから)、とにかく一人でやることをモットーにしているというケース。
     
  • 自分がその道一番の専門家であるとの考えから、他人に任せることで質の低下が発生することを危惧し、すべてを一人でやるか、もしくは他に任せるのを最小限に抑えているというケース。
     
  • 人に指示を出すのも、あるいは逆に指図を受けるのも得意ではないため、何よりも一人でやることが最善であると信じているケース。

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※参考
→「スモールビジネスの可能性

しかしながら、スモールビジネスのままでの充実を望むような場合であっても、時間というリソースが有限であることや、自らの能力の限界が原因となり、ともすればビジネスが立ち行かなくなってしまう状況に直面する可能性は、決して皆無であるとは言えないでしょう。

あまりに一人にこだわってしまうことが、結局は自らの首を絞めてしまうというリスクがあるのです。

そういった事態に備え、場合によってはアウトソーシングという名の下に、自分以外の力をうまく活用することも考えておいたほうがいいのかもしれません。

※参考
→「すべてを自分でやろうとしない

妥当なバランスの難しさ

いずれにせよ前述した通り、自らのビジネスを拡大するかしないかといったこの問題に、明確な正解などありません。

そもそも、起業家としての充実感満足度といったものと、規模収支といったビジネス上のあらゆるファクターとで、妥当なバランスを保つということ自体、極めて難しい課題なのです。

どこのプライオリティを高いものとして捉えるか、何に重きを置くかによって、状況は変わってくるはずです。

間違いなく言えることは、起業家として自らの信念があり、それが本来の起業目的に準ずるような強いものであるならば、決してブレることなくそれに従うべきである…ということだけではないでしょうか。

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