起業家は孤独である

起業を何度か経験されている方であればいざ知らず、脱サラなどの末、初めて起業家として歩んでいこうと志した方が、事業が軌道に乗るまでの過程であまた衝撃を受けることが多いのが、「孤独感」を痛切に抱くという事実です。

これまで何度となく述べてきたことではありますが、特に起業当初は時間がいくらあっても足りないほどの激務になることも多く、ともすれば休日はおろか食事をする時間すら満足に確保出来なかったり、プライベートを犠牲にしたり、仕事以外のやりたいことが何も出来なかったり…といったことで心身共に疲弊してしまうことはままあるでしょう。

その過程で、親しかった友人と疎遠になったり、長年連れ添った大切なパートナーとの別離が訪れたり…といった状況に至ってしまうことは、決して他人事ではありません。

結局、「頼れるのは自分自身だけ」といった孤独に苛まれることは、全く珍しいことではないのです。

いつでもどこでも孤独

起業家はまた、そういった外部環境における孤独とは別に、本業であるビジネスの場においても孤独であることが多いものです。

例えば、起業して会社組織になれば、部下の前では立場上まず弱みは見せられないでしょう。

トップが弱くて頼りない組織では、事業などうまくいかないと思われるし、そもそもそんなところに誰も居たくはないはずだ…そういう意識が働くのは当然のことです。

そして、そういう意識が強ければ強いほど、不安や心配事を率直に相談出来る相手が社内にいることなど、稀有なことなのではないでしょうか(いつでも頼ることが出来て、極めて信頼出来る誰かと、共同経営でもしていればまた話は別なのでしょうが…)。

また、これは個人事業であっても同じことですが、事業の成否や収支のことは間違いなく24時間365日頭から離れなくなります

それも、一人で悶々と抱えなくてはならないことが多いはずです。

要するに起業家は、成功に至るまでの過程においては特に、いつでもどこでも常に孤独であることが多いものなのです。

成功者だって同じ

世界中に存在する数々の成功者たちにおいても、それは同様です。

彼らの卓越した才能と能力が故に、他者を凌駕し、いつしか人並み外れて孤独の境地に達してしまった、ということはもちろんあるかもしれません。

ただ、それだけではなく、その社会的地位や信頼、名誉や名声、莫大な富などを手にするまでの過程で、彼らはほぼ例外なく多くの犠牲を払うという孤独を経験してきているのです。

あるいはまた、数々の犠牲を払い、「孤独」というものの中にどっぷりと浸かってきた状況だったからこそ、その行き着く先が「成功」という2文字で表現される場所だったのかもしれません。

そして、ややもすると彼らは、成功を手に入れてからもなお、孤独という非情な現実を受け入れ続けているかもしれないのです。

世の中には、成功者、ことさら巨万の富を手に入れた人間に対しては、羨望や嫉妬に端を発するブラックな感情を持つ人が少なくないからです。

まるで、事業を成功させてお金を手にすることが悪いことであるかのように。

まるで、それを成し遂げた人が、犯罪者であるかのように。

本当に悲しいことですが、それが現実なのです。

孤独を消化し、対処するために

ともあれ、この孤独という状況を自らの中でうまく消化し、対処出来ないと、誰であってもいつ潰れてしまうか分からないものです。

耐え難い孤独に苦しみ、疲労やストレスがたたって体を壊したりすることはおろか、それが高じて、悩みに悩み抜いた末に自ら命を絶ってしまった人だっているのです。

そうなってしまってからでは、もはや後悔のしようもありません。

何のために起業したのかすら、誰にも分からなくなります。

これは決して、大袈裟に脅している訳ではありません。

実際にそうなってしまっては、元も子もないのです。

起業家が孤独に対処する一番の方法は、同じように起業して悩んでいる人たちのコミュニティや、先輩起業家が集うイベントなどに積極的に参加し、様々なコミュニケーションを図ることです。

当然のことながら、孤独な起業家の不安や悩みは、同じ境遇にいたり、過去にそれを経験してきたりといった他の起業家たちが、一番理解してくれるからです。

そういう人と話をするだけで、ともすれば、そういった人が存在するという事実を知るだけでも、フッと気持ちが楽になることがあります。

たとえ一時であっても不安やプレッシャーから解き放たれ、孤独が解消するのみならず、事業における何らかの気付きや、アイデアをもらえることだって決して少なくはないでしょう。

成功している起業家の多くは、そういった場に足を運び、同志とも呼ぶべき交友関係を自らの手で構築し、孤独を消化する拠り所とすると共に、ひいては自らの事業を活性化させる足掛かりにしています。

それはまさに、以下のページで言及した人的ネットワーク構築の必要性にも、通じる話なのです。

※参考
→「人的ネットワークを大切に
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