起業出来るのは幸せなこと?

冒頭からいきなりですが、今現在、「自分が本当にやりたい仕事」あるいは「心から天職だと思える仕事」に就いていると胸を張って言える人は、いったいどれくらいいるのでしょうか。

正直なところ、割合としてそれほど多くないのではないかと推測しますが、実際にはそれ以前の問題で、「自分が本当にやりたい仕事」「心から天職だと思える仕事」が何なのか、そもそもそれすら「知らない」「分からない」といった人が多いのではないでしょうか。

そして中高年は「自分探しの旅」へ

経験の乏しい若い方ならいざ知らず、社会人経験、ひいては人生経験を積んだ中高年の方であっても、そのような人が少なくないとはよく耳にします。

それ故、突如仕事を辞め、しばらく「自分探しの旅」なるものに出掛けてしまう中高年もいるそうです。

ある日突然、自らの仕事や生活に疑問を感じ、全てを捨てて、一人で気ままに過ごす旅に出てしまうというのです。

旅の最中で、自らの思うがままに色々なものに触れ、経験し、心洗われながら成長していく中で、自分が本当にやりたいことや、自らの生きる価値を見出すことが、大きな目的という訳です。

余談ですが、「自分探しの旅」と言えば、元サッカー日本代表で、海外でも活躍した中田英寿さんが、現役を引退する際に発表した「人生とは旅であり、旅とは人生である」と題されたメッセージでも触れられていることはよく知られていますね。

やりたいことをどうやって見つけるか

ところで、「自分探しの旅」に出られる状況であれば、まだ幸せかもしれません。

それが出来るだけの、時間とお金の余裕を持っているとも言えるからです。

中田さんしかり。

しかし多くの人は、家族を抱えていたり、お金に余裕が無かったりして、今の仕事を辞める訳にも行かず、そもそも休みすらままならず、「自分探しの旅」どころか1泊2日の旅行すら難しい、といった状況が現実なのではないでしょうか。

では、そんな現実の中で、自分が本当にやりたいことなど、どうやって見つければ良いというのでしょう…。

経験しないことには始まらないけど…

そもそも、実経験もなく、ネットや各種メディアで見たり聞いたり調べたりした情報だけで、自分が本当にやりたいことを見つけるなど、どだい難しい話です。

実際に経験して、色々なことを自らの肌で直接感じて、初めて見えてくることも多いはずだからです。

それ故、やりたいことが分かっているという人でも、もし実経験がないのであれば、それは単なる憧れに過ぎないのかもしれません。

やりたいことが見つかるまで心置きなく職を転々とする、などといったことが出来れば問題はないのですが、もちろんそれは許されないのが現実でしょう。

そうすると考えられるのは、今の仕事を何とか続けながら、副業という形で色々な経験をしてみるということになります。昨今でこそ、副業を容認する風潮が少しずつ広がり、本業に影響のない範囲での副業を認める企業も増えてきましたが、それでもまだまだ副業自体を禁止している企業や組織は多く、それが出来ない方も多いというのが実情かもしれません。

多くの人ががんじがらめで動けない

しかしこうなると、もはや八方塞がりです。

そんなこんなで、今の時代、自分の好きなことも出来ず、そもそもそれが何かすら分からず、それを見つける努力すらままならず、まるで蜘蛛の巣にハマってしまったチョウやトンボのように、がんじがらめで身動きが取れない人ばかりなのかもしれません。

なんとも生きにくい世の中になったものです…。

そして、そうやって考えてみると、自ら起業するという困難に挑戦出来ること自体、実は大変幸せなことなのかもしれませんね。

副業しようにもますます…

ところで、副業という形で色々と経験を積んでみるのもいいとはいえ、実際にはそれもままならないのではないか…ということついて、上で少々触れました。

繰り返しになりますが、副業を認める企業も増えてきているとはいえ、まだまだ頑として副業を禁止している企業が多いのも現実です。さらに、それに追い打ちをかけるように、昨今は、マイナンバー制度の開始により、ますます(会社にバレずに)副業が難しくなったと言われています。

副業であっても、マイナンバーの制度上は立派な事業主の扱いとなり、報酬や給与の支払いを受ける場合には、先方にマイナンバーを伝える必要が発生することがあります。

そうすると、マイナンバーによって事業を行っている人物の紐付けが容易になり、照合一発で済んでしまうからです。

要はつまり、いとも簡単に副業がバレてしまうのではないか、といった懸念が持ち上がってきたのです。

これまでも、例えば会社員の場合、給料から天引きされている住民税の額の大きさなどにより、副業がバレてしまう可能性は大いにありました(もちろん、副業についてきちんと確定申告を行っている場合です。それをしないのは、脱税行為になってしまいますので、注意が必要です)。

ただ、照合に手間がかかるため、「副業容疑の追求」は、あまり積極的に行われてこなかったというのが現実のようです。

しかしながら、マイナンバー制度の開始で、それが極めて簡単になってしまったため、少しでも疑わしい場合は追求されてしまうのではないか…という訳です。

そのため、(Googleなどで検索してみるとすぐ分かりますが)Web上でも「マイナンバーで副業はバレてしまうのか」「会社にバレずに副業を続けるには」「副業がバレることを防ぐ方法」などといった記事やコンテンツが次から次へと生み出され、また、コンビニや本屋さんには、同様の特集記事を組んだ雑誌が、数多く並ぶことになったのです。

ただ、バレる・バレないの心配をしなくてはいけないという状況は、あくまで、会社など自分が所属する組織に内緒で副業を行っている場合の話です。

つまり、そもそもこれらの記事やコンテンツは、それを前提にして書かれているため、言ってしまえばあまり健康的なものではありません(笑)。

そこで、中には「思い切って会社を辞めて起業する」といった解決策が一番良し、とされている記事も存在しているくらいです。

それは、ある意味では正解なのかもしれません(笑)。

とはいえ、副業を、安易に本業としてしまうべきではないのも確かです。それ相応の覚悟と、それに伴う尋常でない努力が必要となるからです。

いずれにせよ、語弊が生じることを覚悟で少々厳しい言い方をすれば、今の仕事に全精力を傾けるほどの情熱も持てず、かといって副業でやりたいことをやろうにも所属している企業や組織の束縛に恐れおののき、さらにはそれを本業にする(起業する)ほどの覚悟も持てない…といった中途半端な状況から抜け出せない人には、ますます世知辛い世の中になっていることだけは、確かなようです。

どうやら今の時代、起業する・しないに拘わらず、自らの道を明確に定める「決断」が、極めて大事なファクターであるということなのでしょう。

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