成功している起業家は単なる変わり者なのか

起業して大きな成功を収めている人、特筆すべき功績を残している人は、どこか「変わり者」であると評されることが多いようです。

これは、日本だろうが海外だろうが同様です。

もちろん、そういう人には概して突飛な発想力が備わっていたり、成功までの過程には尋常でない(容易にマネの出来ない)努力が伴っていたりすることが多いため、単にそれを指して「変わっている」と言われることもありますが、どうやら事はそう単純ではない、というより、それで話を終わらせてはいけないでしょう。

孫さんのエピソード

日本が誇る代表的な起業家で、今や世界的企業となったソフトバンクグループの総帥である孫正義さんが、アメリカでの大学検定試験において、辞書の使用と試験時間の延長を認めさせたというのは有名な話です。

なんと、英語でびっしりと書かれた問題文の意味がよく分からないから、辞書の使用を認めろというのです。

さらに、辞書をひく時間がかかる分、試験時間も延長しろという訳です。

最終的には、試験官では話にならないと判断し、州の教育委員会にまで電話させて直接交渉したといいますから、さすがの一言です。

この話から何を学ぶか

この話が、どこまで事実に沿った話なのか、そんなことはさして重要ではありません。

重要なのは、孫さんなら有り得ると万人に思わせてしまう人物であることに違いはないということ、そしてそこから何を学び取るのかということ、なのです。

孫さんの行動は、普通に考えれば大変無謀で非常識としか思えないものかもしれません。

突飛だとか、強引だとか、それこそ変わり者だとか、そういった言葉で片付けてしまうのは簡単です。

ただ、それで終わってしまう人と、そこから何かを感じ取って、自分の人生に活かすことが出来る人とでは、特に起業やビジネスという厳しい世界においては、極めて大きな差がつくことでしょう。

目的のために一般的なルールすら変更させてしまうその発想と熱意、そしてそれを実現させてしまう行動力…。

起業やその後の過程に照らしてみれば、何か重要なことを示唆してくれてはいないでしょうか?

そしてそこから、大きな勇気をもらうことが出来るのではないでしょうか?

ちなみに、当時の孫さんがまだ若干19歳であったこと、また、結果的に見事合格し、全米屈指の名門であるカリフォルニア大学バークレー校に編入したことは、あえて付け加えておきます。

「変人」ジョブズ

もう一人、今や世界で最も有名な企業の一つとなったアップルの創業者で、Macintosh・iMac・iPod・iPhone・iPadなど、革新的な製品を世に送り出し続けた偉人、スティーブ・ジョブズさん

彼が、スタンフォード大学の卒業式で卒業生に贈ったという有名なスピーチがあります。

内容があまりにも素晴らしいので、その動画が世界中で視聴されまくった結果、今や「伝説のスピーチ」と呼ばれるようになりました。

その中で最後に出てくる、有名な一節。

「Stay hungry, Stay foolish.」

日本語に訳せば、「ハングリーであり続けろ、バカであり続けろ」といったところです。

普通に一聴する限りは、「???」でしょう。

ちなみにジョブズさんに関しては、これ以外にも日常における突飛な言動や奇抜な発想が周囲の人を戸惑わせることが多々あったようで、それをもって「変人」と評されることも多いのですが…。

何故、スティーブ・ジョブスさんは、スタンフォード大学の卒業生に向けた贐(はなむけ)のスピーチを、この言葉で締めくくったのでしょうか。

「バカであり続けろ」の意味

さて、彼の訴える「バカであり続けろ」という言葉の意味するところ、その奥底に流れるスピリットは、実際なかなか常人には理解し難いものなのかもしれません。

それ故、「やっぱり変わり者だ」と改めて評した人もいるにはいます。

例えば、一つの捉え方ですが、他人にはマネの出来ない努力をしたり、成功までの道のりにおいて何度もトライ&エラーを繰り返したりするためには、常人の感覚では難しいだろうという意味での「バカ」なのではないでしょうか。

「バカ」=「愚直」、といったところです。

あるいは、「バカ」=「鈍感」、つまり、道を突き進む中で、困難な環境に身を置かれても、他人から何を言われても、決してそれに屈せず、ともすればそれを何とも思わないという鈍感力…といった意味も考えられるのではないでしょうか。

そこに、確固たる正解というものはないのかもしれません。

そして、「変わったことを言うもんだ」と、一言で片付けてしまうのは容易いのです。

ただ、彼のように起業して成功するためには、自分なりにそれを解釈し、自身の思考や活動に活かすことが、何よりも重要になってくるはずです。

それくらい重い言葉なのです。

鈍感力は極めて重要である

ところで、スティーブ・ジョブズさんの発言に絡み、上で「鈍感力」という言葉が出てきましたので、ここでその「鈍感力」について言及しておきます。

起業家として、たとえ小さいことであっても何かを成し遂げようとする際には、大なり小なり困難や問題が何度も襲ってきます。

ましてや、ジョブズさんがやったような世界的な偉業(とてつもなく大きなこと)であれば、その規模や頻度、解決の難しさなどは、我々の想像を絶するものがあるでしょう。

その度に、いちいちくよくよしていては、とても起業家など務まりません。

極論、それを屁とも思わず、逆に楽しむくらいでなければ、何かを成し遂げることなど不可能なのです。

そして、それが出来るのが、鈍感力の高い人なのです。

鈍感というと、単に空気の読めない人(いわゆる「KY」と言われるような人…もはや死語ですが(笑))を想像してしまう向きもありますが、ここで言う鈍感力とは、一般的に辛く苦しいと思われるようなことでも、へこたれず前向きに捉えてしまうという、素晴らしい力なのです。

何事も敏感に捉え、細部にまで神経を行き渡らせるということは、それはそれで大事なことです。

そうしなければならない局面、それでこそ乗り越えられる問題というのも、確かに存在することでしょう。

しかしながら、逆にそれによって本質を見失ってしまうケース、大事なものを見落としてしまうケースというものが、数多く存在するのも事実です。

そもそも、万事に渡ってその調子では、いつかその張り詰めた神経が瓦解し、身が持たなくなるのが人間です。

ただでさえストレスフルな今の世の中、そういった生き方が、どんどん時代に合わなくなっているといった事情もあるでしょう。

昨今はますます、鈍感力の高い人が、幸せで前向きに生きられる世の中になってきているのです。

今やまだまだ、「鈍感力の高い人 = 変わり者」と見られてしまうことも多いですが、鈍感力とは、いわば現代社会を生き抜くカギとも呼べるほど、重要なものになっているのです。

そのうち、起業家として成功するために必要な力としても、筆頭に挙げられるような時代が来るかもしれません(笑)。

余談ですが、適度に鈍感力を持っている人は、友達も多く、人望も厚いことが多いようです。

それは、鈍感であるが故、他人が触れられたくない事項に触れたり、踏み込まれたくない領域に踏み込んだりするようなことがなく、周りとの適度な距離を(結果的に)保っているからということと、あながち無関係ではないように思います。

有名な起業家には破天荒なエピソードが付き物

ともあれ、世界的に有名な起業家や名を成している実業家は、鈍感力が人一倍高かったり、破天荒なエピソードや突飛な発言がたくさんあったりします。

それをあげつらって、単に「変わり者」と捉えることは簡単ですが、あくまでそれは常人目線からの物言いであることは心に留めておくべきかと思います。

彼らにとっては、それは常識、至極当たり前のことであるかもしれないのです。

そして、そうでなければ、起業など成功させることは困難なのかもしれないのです。

起業し、成功を目指している人にとっては、常人であり続けることが、実は大きな落とし穴になり得るということです。

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