起業家とダイバーシティ

人付き合いにおいて、相手と合う・合わないといったインプレッションやフィーリングは、非常に重要なものです。

そうやって人は、自然と気のおけない仲間同士でコミュニケーションを形成し、笑顔の溢れた空間を作り出しながら、豊かな生活を謳歌する訳です。

そして、それをそのままビジネスの世界、すなわち自らの事業に持ち込めれば、それに越したことはないかもしれません。

要するに、起業家として自分に合う、気のおけない仲間たちだけと一緒にビジネスをして、社会に貢献する喜びを分かち合う。

それが実現出来れば言うことはありませんが、現実的には往々にしてそうはいかないものなのです。

画一的な組織はいつか行き詰まる

また、そもそもそういった組織では、最初こそ楽しくビジネスすることが可能かもしれませんが、高い確率でいつか行き詰まってしまうことでしょう。

要するに、自分に合う人、気のおけない人、一緒に働きたいと思える人と共にビジネスをするというのは、特にスタートアップ時においては極めて重要なファクターになるかもしれませんが、ずっとそれだけではダメなのです。

いつまで経っても、同じような人間ばかりが揃った、画一的な組織になってしまう可能性が非常に高いからです。

そういった組織からは、まず新たな価値観やイノベーションは生まれません。

毎日通り一遍、決まりきったことを全員が同じようにやるだけであればそれで問題はないかもしれませんが、事業全体としてそれではいつか行き詰まり、成り立たなくなる日が必ずやってくるのです。

求められる「ダイバーシティ」

「ダイバーシティ」といったことが声高に叫ばれてから、久しいですよね。

今やその意味や真髄は多くの方が理解するところではありますが、改めてこの「ダイバーシティ」について考えてみたいと思います。

この言葉を聞くと、女性の社会進出やその活用を思い浮かべる方も多いかと思いますが、それはダイバーシティの一部であって、決してすべてを意味するものではありません。

「多様性」と訳されることが多いのですが、組織においては、人種・国籍・性別・年齢などを問わず、幅広い人材を活用することであるとされています。

もっと深く言えば、個々人の特質や相違点を尊重し、それを受け入れ、成果や能力といった職務に直接関係する部分のみを考慮し、評価するといった、今や世界的に共通する基本概念なのです。

日本でも、自治体によっては同性カップルに「パートナーシップ証明書」が発行され、結婚に相当する関係として認められたり、生命保険各社においては、その証明書によって同性カップルの一方を死亡保険金の受取人として認める動きが出ていたりするなど、LGBT(Lesbian・Gay・Bisexual・Transgender)を含め、まさにダイバーシティを推進する取り組みが、そこここで拡がっています。

このように、社会通念や常識が一昔前とは随分と様変わりしている昨今、組織としてもまさに求められているのはこのダイバーシティであって、起業家としてそこは決して無視の出来ない情勢です。

そんな中、起業して成功するためには、自分に合った人や、同じような価値観を持った人だけではなく、全く異なる背景や価値観を持った人を受け入れ、多様性に富んだチームを作ることが重要なのです。

そして、そういうチームはサバイバルにも強いし、個々人それぞれの価値観がチームに様々な何かをもたらし、時にそれがイノベーションとなって発揮されるのです。

ダイバーシティを推進する姿勢

過去に何度か触れたように、どんな人材を採用するか、要するに、誰を船に乗せるかという問題は、起業家として極めて重要なものです。

※参考
→「人材の採用は極めて慎重に

その際、単に優秀な人材を採用すればそれでいい、といったものではありません。

起業家(トップ)である自分以外の人材に対して、異なる背景や価値観を認め、意識してダイバーシティを推進する姿勢こそが、まさに今の採用活動には、最も必要なものなのかもしれません。

「個」の力を活かす

とにもかくにも、競争力やイノベーションの源泉が、人材であることには間違いがありません。

そして昨今、種々のテクノロジーの進化を背景とした、ノマドなどに代表される柔軟な働き方の台頭や、それらを含めた価値観の大変革に伴い、「個」(個人)の力が強まっている、あるいは、強い「個」が生き残る時代である…などと盛んに叫ばれています。

ますます、「個」すなわち個々の人材にスポットが当たる時代となっているのです。

さらにその傾向は、日々加速度的に強まっていると言っても決して過言ではありません。

裏を返せば、「個」が強い時代における「組織」というものの存在意義や、その役割が、今、非常に問われているということです。

そういった中で改めて、起業家として、自らの抱える組織をどうしていくべきなのか…を考えた時に、やはりダイバーシティという概念を無視する訳にはいきません。

上述したように、同じような人間ばかりを揃えても、画一的な組織になっていくばかりです。

言い換えれば、長年、同じような環境、同じような境遇にある人を、何人集めたところで、目新しい発想やアイデアは生まれず、イノベーションなど起こり得ないということです。

ひいてはそれは、昨今強まっていると言われる「個」の力を活かすことには全くならず、厳しいビジネスの世界における高い競争力など望むべくもないということなのです。

そこで必要になるのは、組織として明確な目標を掲げ、強い「個」がお互いに切磋琢磨し、時にはぶつかり合うことの出来る、闊達な環境の構築です。

そこにこそ、組織が存在する大きな意味があるのです。

つまり、それぞれの属性や価値観が全く違うもの同士がコミュニケーションすることで生まれる衝突や対立、さらにはそこに醸し出される違和感や緊張感が、決して「個」が単独では為し得ない、高い競争力を生み出すのです。

結局はそれが、それぞれの「個」の力を活かす「強い組織」を作るということと、同義であるのです。

起業家として組織を発展させていくつもりであるならば、このこともまた、強く認識しておくべき事項でしょう。

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さらに以下、補足…という名の余談です(笑)。

ところで、上述した「長年、同じような環境、同じような境遇にある人を、何人集めたところで、目新しい発想やアイデアは生まれず、イノベーションなど起こり得ない」という現実は、起業家個人に当てはめて考えてみても、大いに学ぶべきところがあるように思います。

つまり、この現実を個人レベルに落とし込んでみれば、毎日、同じような環境で、同じような生活をしていても、目新しい発想やアイデアは決して生まれず、イノベーションなど起こしようもない…ということになるのではないでしょうか。

要するに…。

少しでもいいから、毎日生活に変化をもたらしてみる。

些細なことであっても、意識して、インプットを変えてみる。

そういったことが、将来イノベーションを起こすためのきっかけになり、ひいては成功をぐっと手繰り寄せるための大きな一歩になるかもしれないということではないでしょうか。

さらに言えばこれは、起業家のみならずすべての人々が、生活に張りと潤いをもたらし、活性化を促すために、ぜひ意識して心掛けるべきことなのかもしれませんね。

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