独立や起業というと、頑固・我儘で自我が強く、組織に馴染めない人間が選択する道といったネガティブなイメージを持つ方も時にいらっしゃるかもしれません。
とはいえ一般的には、確固たる自信と高い志を持った超自立型人間が、より高みを目指すために一念発起するといった印象を抱く方が多いはずです。
一言で言えば「カッコいい」、ともすれば、サラリーマンを続けることよりも「凄い」「偉い」といった思いを持つ方も相当数いらっしゃるはずです。
起業も一つの選択肢に過ぎない
ただ、起業をすることが「カッコいい」ことなのかどうかはともかく、サラリーマンを続けることよりも「凄い」とか「偉い」とかいうのは、必ずしも正しいものではないということはここで言及しておきたいところです。
それは、サラリーマンを続けるいうことが人生における一つの選択であるとするならば、起業という道も、同じように一つの選択肢に過ぎないからです。
要するに、どちらを選んだほうが「凄い」とか「凄くない」とか、あるいは「偉い」とか「偉くない」とかいう問題ではないのです。
覚悟があればサラリーマンだってカッコいい
言い方を変えれば、確かに起業はカッコいいかもしれませんが、サラリーマンとして現在の会社に骨を埋めるという覚悟を持って、確固たる意志と共にそれを選択するというのも、同じようにカッコいいことではないでしょうか?
経済的にも社会的にも非常に厳しい昨今、リストラや倒産などで、たとえ大企業に所属していたとしても全く安心することなど叶わない状況です。
そんな中、現在の会社に居続けること、そこで命を張ってとことん頑張るという選択をするということは、ややもすると起業するのと同じ、もしくはそれ以上に勇気の必要なことなのかもしれないのです。
そういう意味でも、様々な記事やコメントなどで見かけることのある、「サラリーマンで終わる人」とか「一生サラリーマンのままで過ごす人」などといった、ともすれば嘲笑の意味を含んだ表現には、非常に違和感を覚えます。
念のため申し上げておきますが、これは、皮肉でも何でもありません。
起業する側の観点からの、何か含みを持った一方的な物言いなどでも決してないのです。
今の会社に骨を埋める、という覚悟
現在、会社に所属している方、すなわちサラリーマンの方にお聞きしたいのですが、周りに「独立起業を考えている」と言っている人はいらっしゃいませんでしょうか?
あるいは、「ヘッドハントの話がある」とか「より待遇のいい環境に転職しようと思っている」とか言っている人でも構いません。
そういう人たちが、何故そういうことをあえて公言するかと言えば、自分の力を誇示したいが故、すなわち、独立起業したほうがカッコいいとか、ヘッドハントされたほうが偉いとか、そういった気持ちがあるからでしょう。
そして、大っぴらにそういうことを公言してしまう人に限って、なかなか会社を辞めなかったりするものです。
その言い訳としては、「資金がなかなかたまらなくて…」とか「上司に引き留められていて仕方なく…」とか「(ヘッドハント先より)もっといい条件の環境をずっと探していて…」とか…。
それはそれで本当のことなのかもしれませんが、少し冷静に考えてみて下さい。
そうやってウダウダと言い訳しながらなかなか現在の会社を辞めない人よりも、「自分はこの会社に骨を埋める。今の仕事にとことん命を賭ける」と言い切り、覚悟を決めて努力している人のほうが、余程カッコいいのではないでしょうか?
皆、日々を生き抜いている
もちろん、会社が倒産したり、リストラ(解雇)されたりしない限りは、どんな形であれサラリーマンを続けられる訳で、その環境にただ甘んじていることがカッコいいのではありません。
確かにそうやって、明確な意思も持たず、特段のプライドも何の覚悟もなく、ただサラリーマンを続けているだけの人も一定数存在するので、そういう人たちと起業家を比べて、「起業家のほうが凄い」と言いたくなる気持ちも分からないではありません。
前述したような、言い訳しながらなかなか会社を辞めない人の中には、結局そういった類いの人も含まれているのかもしれません。
ですが、厳しいビジネスの世界で、そんな人たちはいずれ淘汰されたり、閑職にまわされたりする可能性が高いのです。
あるいは、そういう人たちも、どこかで気付きを得て、生まれ変わる時が来るはずなのです。
要するに、起業家にしろサラリーマンにしろ、第一線で活躍している人たちにおいては、どちらが凄いとかどちらが偉いとか比べようもなく、それぞれが大変厳しい戦いの中を日々生き抜いているのです。
起業後は傲りが命取りになる
とはいえやっぱり、起業家の厳しさは、会社という後ろ盾に守られているサラリーマンとは絶対的に別物である面が存在します。
※参考 →「サラリーマンと起業家の違い」 題名通り、サラリーマンと起業家の違いについて述べています。 また、そこで導かれている「謙虚な気持ちを大事に」という示唆は、以下で述べている「傲りが命取りになる」といった内容に通じるものがあるはずです。
だからといって、どちらが凄いとかどちらが偉いとか比べようがないという状況の中であえて起業せず、頑張ってサラリーマンを続けたほうがいいということを言いたい訳ではありません。
起業するにあたって、あるいは起業した後においては特に、少しでも周りを見下すような気持ちや、自分の方が上であるかのような思いがあるのなら、それだけは改めて考え直してみたほうがいいだろうということを申し上げたいのです。
起業して成功するというシビアな道程においては、ちょっとしたその傲りが命取りになる可能性があるからです。