本丸に集中せよ

起業して、事業が軌道に乗って安定するまでは、なかなか大きな不安やプレッシャーから逃れることが出来ないものです。

起業家たるもの、一見どんなに成功したように見えても決して安定していることなどなく、常に不安やプレッシャーが付きまとうものであるということも出来ますが、そうだとしても、起業当初のそれが、取り立てて大きなものであることは考えるまでもありません。

そのため、そういった不安やプレッシャーを少しでも軽減するべく、起業のきっかけとなった独自の事業アイデアなど、当初目論んでいた事業において結果が出ないうちは、あれもこれもと他の事業を含めたあらゆることに手を出してしまったりします。

言うなれば、「金に換わるものなら何でもやる」といった状態です。

要するに保険をかけながら、一方で当初から考えていた本業を推し進めるといった形ですが、特に起業当初において、このようにマルチで事業を進めるのは、うまくいかないことも多いものです。

もちろん、それで起業当初を乗り切って、今やそもそも考えていた本業で見事に成功を勝ち得ている起業家の方もいらっしゃいます。

また、起業当初に保険として手を出した他の事業がたまたまうまくいってしまい、そちらを本業として起業家人生を歩んでいるといった例もあります。

ただ、前者の多くは、それでも不安が拭えず、当初進めていた保険としての事業を、未だに兼業で続けていたりします。

そして、後者の多くは、当初の目論見とは違うという、起業家としての何かモヤモヤと割り切れないジレンマを抱えていたりするのです。

あれこれ考えるのは軌道に乗ってから

そういった方を多く見てきた私の結論は、起業当初に「コレ!」と定めた一つの事業(本丸)に、とにかく全精力を注ぎ込んで集中したほうが良い、というものです。

下手にビジネスや経営、マーケティングのことを勉強して知っている人ほど、起業当初からマルチで事業を進めたり、バックエンドのことまで考えていたりします。

バックエンドとは、最初に見せたり、見込み客を集めたりすることだけを目的とした商品やサービス(フロントエンド)に対して、本当に売りたい商品やサービスのことで、フロントエンドの延長線上にあるものです。

広告で一部の商品を超低価格に設定して「赤字覚悟!」などと謳ったり、無料のサンプルを配ったりすることは、フロントエンドの最たる例ですが、それらはすべて、そうして集まった見込み客の一定割合が、バックエンドの商品やサービスを購入してくれることを目論んでいるが故の戦略なのです。

そのため、一般的にバックエンドは高額だったり、利益率が高かったりすることが多いのです。

これは確かにマーケティングの基本でもあり、それを考えて戦略・戦術を練ることは決して悪いことではありません。

とはいえ、起業当初からあまりにこの発想に囚われて事を進めると、肝心の本丸事業への集中投資が難しくなって、ブレが生じかねません。

それらは起業当初ではなく、むしろ本丸である一つの事業が軌道に乗ってから考えればいいことであると、私は思っています。

背水の陣で自らを追い込む

熱い思いを抱いて起業した人ほど、本丸に集中し、保険としての他事業などには目もくれずに突き進んでいたりします。

それによって視野や考え方が狭くなったり、謙虚さを失って柔軟に対応することが出来なくなったりしてしまっては元も子もありません。

しかしながら、そうやって逃げ道を断ち、自らを追い込んでいくその姿勢は、起業家が起業家であるがための本質とも言えるのではないでしょうか。

特に起業当初は、退路を断ち、背水の陣で本丸に臨むことが、その後、曇りのない起業家人生を送るためにも、そして成功に向けてひた走るためにも、必要なのではないかと考えます。

※参考
→「背水の陣で臨め
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