睡眠時間を削って仕事をすることが、起業家が成功するための必須要件か

以前、ホリエモンこと堀江貴文さんが、起業当初は睡眠時間以外をほぼすべて仕事に費やしていたことに触れたり、「週100時間働け」といった世界に名立たる有名起業家の言葉をご紹介したりしながら、特に起業当初においては、起業家が長時間働くのは必然とも言えるのではないかとの話をしました。

また、順調に歩を進めている起業家が、事業そのものに注力する一方で、自分への惜しみない投資を欠かさないことにも触れました。

そのため、多くの場合において時間が足りないという状況に陥り、起業家にとってとにかく大事なものは時間であるということを悟るのだということも言及しました。誰にとっても1日は24時間、1週間は168時間、つまり「時間とは全ての人間に平等に与えられているものだ」とはよく耳にする言葉ですが、ライバルに差をつけ成果をあげるためには、平等に与えられている時間をどのように使うかが最も重要な鍵であると…。

※参考
→「起業家が長時間働くのは必然か
→「自分への投資を怠るな

起業家は睡眠時間を削って働くもの?

これを受け、とにかく起業家は睡眠時間を削って働くものだ、長時間眠っている暇などないものだ、とストレートに捉えてしまう向きもあるかと思いますが、果たしてそういう認識で正しいのでしょうか?

また、睡眠時間が短いことを美徳とするような傾向、ともすれば「睡眠時間が短い人 = 本当に頑張っている人、本当に仕事が忙しい人」と判断するような風潮すらありますが、果たしてそれは的確と言えるのでしょうか?

言い換えれば、睡眠時間を削って仕事をすることが、起業成功のための必須要件になるのでしょうか?

起業家の雄、堀江さんの睡眠時間も、実は…

冒頭で触れた、堀江さんの例を改めて取り上げてみます。

堀江さん曰く「起業して成功出来ないのは、睡眠時間以外のほぼすべてを仕事に費やしていないから」との見解で、自らも睡眠時間以外をほぼすべて仕事に充てるというストイックな生活を実践されていたということでした。

ここで、(起業家であれば)「睡眠時間以外をとにかく仕事に費やせ」との示唆は読み取れるものの、「睡眠時間を削って仕事をしろ」といった趣旨のことは一つも仰っていないことに注意してください。

実際に堀江さん自身、圧倒的な集中力を発揮して高い生産性を確保するために、睡眠時間は十分にとること(基本は毎日8時間)を心掛けているそうです。

つまり、「睡眠時間以外を仕事に充てていた」一方で、「睡眠時間はしっかりと確保していた」ということなんですよね。

あの世界的起業家の睡眠時間も、実は…

実は、海外の有名起業家の中にも、堀江さんと同じような考えで十分に睡眠を確保しているという人はいます。

世界の流通を根底から覆し、短期間で圧倒的なメガ企業に成長したアマゾン・ドット・コムの創業者、ジェフ・ベゾスさん

世界中でトップクラスの起業家である彼であれば、さぞかし寝る間も惜しんで仕事一筋かと思いきや、実は常々「睡眠時間が8時間は必要」であるということを語っているようです。

特に、彼のように既存の仕組みや固定観念を根本から変えてしまうようなクリエイティブな仕事をするには、十分な睡眠時間により頭を冴え渡った状態に保っていることが、極めて重要なのかもしれません。

睡眠は起業家にとって重要な脳の部分に影響を及ぼす

睡眠が、人間の脳において、意思決定やクリエイティブ思考などのための重要な部分に影響を及ぼすことは確かです。

そしてそれは、起業家にとって極めて大切な、事業戦略や企画立案のための能力をもたらす部分でもあります。

そのため、起業家が成功するためには毎日7~8時間の睡眠が必須であるとの見解を持っている、脳の専門家も存在するようです。

大事なのは適正な睡眠時間を把握し、効率と生産性を最大化すること

もちろん、3時間睡眠でも大丈夫な人(ショートスリーパー)や、8時間以上眠らないとダメという人(ロングスリーパー)など、適正な睡眠時間というものが人によって様々であるというのは既知の事実です。

成功している起業家がすべて7~8時間の睡眠をとっているという訳ではなく、実際に睡眠時間の少ない著名な起業家も数多く存在します。

重要なのは、仕事の効率化や生産性に影響を及ぼさない、自分にとっての適正な睡眠時間を把握することです。

つまりは、睡眠時間における、最大の効率と生産性が担保される分岐点を知ることです。

その分岐点(適正な睡眠時間)を把握し、それをきちんと確保することが、成功するためのポイントであるということです。

ただ、これはビジネスに携わる以上、サラリーマンであろうが起業家であろうが誰にとっても同様に言えることです。

特に起業家であるからといって、睡眠時間に対しても特別な思案を巡らす必要があるという訳ではないということでしょう。

つまるところ、「睡眠時間を削って仕事をすることが、起業成功のための必須要件である」という訳ではなく、重要なのは「寝る間も惜しんで働くくらいの情熱をビジネスに傾ける」ということ、一方で「睡眠時間は、自らに適した長さでしっかりと確保する」こと、この2点に尽きるのではないでしょうか。

そして、この2点は決して相対するもの(矛盾するもの)ではなく、上述した通り、「最大の効率と生産性が担保される分岐点を知る」ことで、両立できるはずです。

睡眠時間が少ないと言われている著名人の実態は?

余談になるかもしれませんが、睡眠時間が少ないと言われている歴史上の著名人についての、いくつかのエピソードを挙げておきます。

あくまで一説に過ぎませんので、100%の真実とは限らず、実際にはどうだったのだろうかといった疑問は拭えませんが…。

例えば、革命期フランスにおける軍人・政治家であり、ナポレオン1世として皇帝の地位にも就いた偉人、ナポレオン・ボナパルトの睡眠時間が、毎日3時間であったというのは有名な話です。

ところが実は、昼寝や居眠りを合わせると1日8時間近く眠っていたという、彼の側近だった人間による話も残っているそうです。

大事な会議中などはもちろん、ひどい時には馬に乗っている最中でも居眠りをしていたとか。

もしこれが本当だとすれば、やはりさすがのナポレオンも、1日3時間の睡眠だけで精力的な活動を続けるのは難しかったということでしょうか。

また、夜中にてんかんの発作が起きるため、そもそも夜に3時間以上続けて眠ることが難しく、特に意識して睡眠時間を短くしていた訳ではなかったという説もあるようです。

 ・
 ・
 ・

さて、もう一人の著名人は、アメリカ合衆国が生んだ発明王、トーマス・エジソン

発明家としてその存在は傑出しており、日本でも小さな子供ですらその名前だけは知っているほどです。

電球を始め、彼の発明に端を発して現在でも利用されているものはたくさんあり、その功績は「偉人の中の偉人」とも呼べるほどとてつもなく大きいものです。

そのエジソンも、発明のための作業や活動に昼夜関係なく没頭していたため、睡眠時間が非常に短かったと言われています。

「エジソンが寝ている姿など見たことがない」とか、「エジソンの研究所にある時計には針がない」などと噂されていたという逸話が残っているほどです。

かくして、その睡眠時間は、平均して3~4時間ほどだったようです。

しかしながらその一方で、ナポレオンと同様、日中に小刻みな昼寝を繰り返していたとも言われており、実際の合計睡眠時間はいかほどだったのかということについては、諸説あるというのが現実です。

上で述べられている通り、睡眠というものが、人間の脳におけるクリエイティブ思考のための重要な部分に影響を及ぼすことを考えると、ことエジソンのような人にこそ、睡眠というものが人一倍重要だったはずであり、多くの人において「実は意外と眠っていたのではないか?」といった疑問が湧き上がったとしても、何ら不思議ではないのです。

ナポレオン・ボナパルトの話にしても、トーマス・エジソンの話にしても、今となっては真実は誰にも分かりませんが、彼らが成し遂げた功績を考えると、むしろ「実は十分に睡眠をとっていた」と考えるほうが自然なのかもしれません。

睡眠時間が短い起業家は脳の老化が早い?

睡眠時間が短い生活を続けることはさまざまな負の影響があることが分かっており、最近では、睡眠時間が短い人ほど脳の老化が早く、認知力が低下しやすいという研究結果もあるようです。

短期的に片付けねばならないタスクが重なり、すべてをスピーディに終わらせることが今後の事業発展に大きな影響を及ぼすなど、起業家にとって睡眠時間を削ってでも頑張らなくてはならない局面があるのは私も経験済みですし、ある意味で致し方のないことであると考えます。

しかしながら、起業家として将来に渡って成果を生み出し、年齢を重ねるまで長きに渡って活躍を続けるためには、若いうちから十分な睡眠時間を確保しながら、脳の老化をできる限り避けたほうが良いという見解にならざるを得ません。

起業家として最も大切なのは、実際に睡眠時間を削りながら身体を酷使して働くことではなく、いざとなればそれくらいの攻勢も辞さないという、仕事に対する揺るぎないスピリットを維持することです。視点を変えて、「パフォーマンスを最大化するために、しっかりと睡眠時間を確保することも仕事の1つ」と考えることも出来るでしょう。

なお、「睡眠時間」については分かった。では、「睡眠の質」について、起業家はどのように考えたら良いのか?という疑問については、ぜひ次の記事をご覧くださいませ。

※参考
→「起業家は睡眠をあなどることなかれ
タイトルとURLをコピーしました