波があって当たり前

起業して、事業を推し進めていく過程においては、順調な時期もあれば、うまくいかない時期もあります。

一説によれば、企業には成長か衰退かのどちらかしかないそうです。

厳密に言えば現状維持はあり得ない、もしくは大変困難なことであると言います。

平たく言えば、どう立ち回ろうが時代の流れや環境の変化に左右される、あるいはそれに合わせて自らも変わっていかざるを得ない…そういう意味なのでしょう。

もしくは、すべてが凄まじいスピードで突き進んでいる今の時代において、現状維持はそれイコール衰退を意味する…そんな厳しさを示唆しているのかもしれません。

それはともかく、当然、起業家のみならず、あらゆる人間の人生についても同じように、良い時もあれば、悪い時もある訳です。

うまくいかない時、悪い状況の時に、必要以上にそれをネガティブに捉え、あってはならないものとして徹底抗戦するような姿勢は、ともすれば疲弊を生むのみで、周りが見えづらくなり、良い方向に転換する機会さえ見失いかねません。

悪い時があるから良い時がある

何事も、波があって当たり前なのです。

悪い状況に対して、過剰に敵対し、真正面から対峙して戦ったとしても、どうせまたすぐに別の敵がやってくるだけです。

悪い時があるから良い時がある、くらいに考えておくべきです。

不思議なことに、それくらいの心構えでいたほうが、解決措置や改善案も、生まれてきやすいものです。

時には、「今は耐える時だ」と腹をくくって、静かにそれが過ぎ去るのを待つ、すなわち、その波に身を任せてみる…といった、大らかな気持ちでじっとやり過ごすことも、必要なのかもしれません。

良い状況が続くことは必ずしも良いことばかりではない

スポーツの世界などで、ずっとトップに君臨し続けることが、いかに凄まじいプレッシャーを伴うものであり、どんなに大変であるかというのは、よく言われることです。

決して想像の域を出ませんが、そこでしか見えない素晴らしい景色がある一方で、そこに居続ける者にしか分からない、計り知れない重責が伴っているはずです。

例えば、全国大会10連覇という実績は大変素晴らしいものですが、それは常人では想像もつかないくらいの努力とプレッシャーに裏打ちされたものに違いありません。

しかしながら、周りの人間はそれを差し置いて、簡単に「11連覇出来るかな?」「何連覇まで続くかな?」「オリンピックでメダルは?」云々と、どんどん期待してしまうことが多いはずです。

まるで、テレビなどでよく目にする、全く遠慮のない記者やレポーターのように(笑)。

事業、ひいては人生において、良い時ばかりが続くと、これに似た自らへの期待とプレッシャーが、嵐のように押し寄せてきます。

もはやそれは、「この状況を未来永劫ずっと続けなければならない」といった義務感、そしてある種の強迫観念です。

こうなると人は、想像以上に疲れてしまいます。

つまり、良い状況が「当たり前」になってしまうと、それはそれで精神的に大変苦しいのです。

それ故、それが長く続くと、すべてをリセットして楽になりたいと考え始めます。

そして、ある日突然、すべてをやめてしまったりするのです。

緊張の糸がぷつりと切れる、という状態に近いでしょうか。

世界的にトップレベルにあるスポーツ選手が、最盛期に突然引退を表明するなどといった事態も、こうしたことが原因であるケースがあります。

そして、引退後に、「今はすこぶるすがすがしい気持ち」などと笑顔で語ったりするのですが、あれは恐らく心からの本音なのでしょう。

そう考えると、良い状況ばかりがずっと続くよりも、多少悪い時期があったほうが、経験値もつくし、人生も活性化されて、長い目で見れば良かったりするのです。

「タッチ」「陽あたり良好!」「ナイン」「みゆき」「クロスゲーム」「MIX -ミックス-」などで有名な漫画界の大御所、あだち充先生の作品「H2」にて、主人公の国見比呂が言うセリフの1つに、次のようなものがあります。

「勝つことばかり考えてたんじゃ、勉強不足になるぜ。たいていのスポーツは勝った試合より、負け試合から多くを学ぶもんだろ。」

悪戦苦闘から離れてみる

私は決して、「悪い状況に対して一生懸命対策を打つことは良くない」などということを言いたい訳ではありません。

つまるところ、それ(悪い状況)をあって当然のものとして受け入れ、ある意味横に置いておくことで、必然的に対策が生まれたり、時間が解決してくれたりすることもあるのではないか、といった一つの提案なのです。

悪戦苦闘からあえて離れてみることで、何かが見えてくるということは、間違いなくあるはずです。

そしてそれによって、状況が劇的に改善することだって、間違いなくあるはずなのです。

悪い状況が続いて疲れてしまった時には、ぜひそんなことも思い出してみると、少しは気も楽になるのではないでしょうか。

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