経験にこだわりすぎない

学生から社会人経験なくいきなりベンチャーを立ち上げるなどという場合であればいざ知らず、ある程度のビジネス経験を持った人が起業を志す場合、多くの方がこれまでの経験を活かしてそれを実現しようと考えます。

当然、これはごく自然なことであって、自らが経験してきた業界や業種であれば、起業後の立ち上がりが早い上、その経験が長ければ長いほど、それ相応の人的ネットワークや営業ルートなども構築されており、早期の収益も見込めるはずです。

ただ、あまりに自らの経験にこだわりすぎると、視野が偏り、可能性を狭めてしまうことにもなりかねません。

これまでの経験や残してきた実績に対する、強すぎる自負やこだわりによって、成功に向けた大いなる可能性を開花させる芽を摘んでしまっている例は、実は決して珍しいものではないのです。

経験にこだわる2つのパターン

そのパターンを大きく分けると、正反対とも思える2つに集約されるようです。

一つは、自らの経験や過去の実績に対する自負やこだわりが強すぎるあまり、起業後にうまくいかなかったり、軌道になかなか乗れなかったりすると、「こんなはずではない」「自分の実力からすればもっともっとやれるはずだ」などと考えて、狭い視野で同じようなアプローチを繰り返し、どんどん深みにはまっていくというパターン。

少し視点を変えるなり、広い視野で捉えるなりして、別の角度からアプローチすれば好転するかもしれないものを、自らが経験してきた非常に狭い領域にこだわり続けるため、なかなか現状から脱却出来ずにもがいているというものです。

もう一つは、芳しくない状況に陥った際、先述のパターンとは逆に「自分はこの程度だったのか」「まだまだ起業するには早かったのではないか」などと考えて、自信をなくし、思考が停止してしまうというパターン。

これも、新たなアプローチで方向性を転換するなどすれば、状態は上向く可能性があるにも拘わらず、これまでの経験や実績にこだわり続けるが故、なかなかそういった発想には至らず、ネガティブな思考状態のまま、同じようなアプローチを繰り返しているだけのことが多いようです。

また、後者と似たようなパターンは、起業前にも多く見られるもので、すなわち、経験にこだわるが故に「(この程度の経験では)自分はまだまだ起業するには早いのではないか」などと疑心暗鬼になり、なかなか起業に踏み切れず、いたずらにそれを先延ばしにしてしまうというものです。

成功している起業家は自らの経験にこだわらない

さて、成功している起業家は、それぞれ何かしらについての強い「こだわり」がある一方で、自らの経験に関しては、それを忘れ、広い視野であらゆる可能性を模索することを心掛けてきた、といったケースが少なくありません。

確かに、確率論だけから言えば、経験がない業界や業種で起業するよりも、自らの経験を活かした分野で起業するほうが、成功の事例も多く、ベターであることは言うまでもありません。

私も、過去の経験を活かして起業することや、実績に大いなる自負を持つことについて、決して否定している訳ではないのです。

ただ、それにあまりにこだわりすぎて、斬新な発想や別角度からのアプローチが起きにくい状況になってしまうと、それなりだった成功確率も、大きく下がってしまうであろうことは否めません。

あなたの経験が致命傷になる危険性

経験を「活かす」のは大いに結構です。

その優位性によって早期に結果が出たり、他者と差別化が図れたりすれば、まさにストロングポイントとしてそれは「活きた(=生きた)経験」になります。

ただ、それに頑なにこだわり、思考が凝り固まったものになってしまうと、経験があること自体がウィークポイントになります。

そしてそれはもはや、「死んだ経験」です。

アドバンテージどころか、致命傷にもなりかねない危険な要素です。

決してそうならぬよう、経験を活かした分野で起業する際は、過去の経験や実績にこだわらず、常に視野を広く保つことを心掛けることが、成功に向けた必須要件となるでしょう。

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