起業とはゼロからのスタートである

改めて言うまでもないことですが、起業は基本的にゼロからのスタートです。

前職からの顧客や取引先をうまくそのまま引き継いで事業を開始させられる場合もありますが、それはたまたまスタート時に多少有利であるといった程度に過ぎないことも多いのです。

結局はその場合であっても、起業家としては他と同じようにゼロからのスタートであって、その先、いかに新たな顧客や取引先などを開拓していけるか、そしていかに自らの事業を拡大・発展させていけるか、といった意味では何ら変わりがないのです。

さて、なぜここへ来て、こんな今さら感ありありのテーマに触れるかと申しますと、希望に満ちた若き起業家が、いざ起業し奮闘していく中で、あまりに真面目すぎるが故なのか、あるいはそれが若さなのか、守りに入りすぎてしまって、逆に機会を損失しているケースを何度か目の当たりにしたからなのです。

守りに入ることが機会損失を招く

いったいどういうことなのでしょうか。

人間誰しもが、何事においても、初めは未経験であるのは当然のことです。

まさか、前世からの経験を今世に持ち越していることなどないでしょうから…。

たまに、初体験なのに何でもそつなくこなしてしまうような天才を見た時には、あながちそれも有り得ないことではないのかと、本気で考えてしまったりもしますが(笑)。

そんな余談はともかく、要するに、あらゆる分野において、たとえどんなにその道のエキスパートやスペシャリストであっても、初めは皆と同じゼロからのスタートだったはずなのです。

努力して、鍛錬を重ねて、その状態に至っているということなのです。

そしてそれは、起業家であっても同じことです。

どんなに成功している起業家だって、世界的に著名な偉大なる実業家だって、「起業初心者」の時代が、必ずあったのです。

つまり、初めての起業だったり、起業して間もなかったりすることを、必要以上に引け目に感じ、自分を卑下する必要など全くないのです。

ところが、特に若き起業家においては、このことを相手に正直にさらけ出し、経験不足・知識不足であることをあえて伝えてしまう人がいます。

「でも、努力だけは誰にも負けませんから、絶対に大丈夫です!」という訳です。

しかしながら、それで仕事がもらえるかというと、それは極めて稀なことであると言わざるを得ません。

懐の深い大御所経営者が、「気に入った。君に頼むことにするから、ぜひ頑張ってくれ!」などとポンポンと肩を叩きながら仕事を任せてくれることは、ドラマの世界の中だけの話だと思っていて間違いはないのです。

私が言う、「守りに入りすぎてしまっている」状態というのは、要はそういうことなのです。

すなわち、過度な期待を抱かれて仕事を依頼され、その期待通りに結果が出せなかった時のことを考えて、正直に力不足である自分をさらけ出すことで、守りに入っているのです。

起業がゼロからのスタートであるということは、極論、言い換えれば、失うものは何もないということなのです。

にも拘わらず、これはいったい何を守っているのでしょうか?

不安や心配はもちろん分かりますが、起業したてのゼロスタート時、言わば今以上にマイナスになることなどないという状況の中で、とにかくプラスになる機会を獲得していかなければなりません。

そうやって守りに入ることで、その機会すら失っているとしたら、それはどう考えてもうまいことではないと思うのです。

起業時に必要なのは綺麗事などではない

初めからうまくいく起業家というのは、往々にして、自らの力不足をすべてさらけ出してしまうようなことはしません。

あたかも経験豊富な、既にその道のトップ・プロフェッショナルであると振る舞うことすら珍しくはありません。

そうやって、自分には多少ハードルの高い仕事も獲得しつつ、その裏で、実は猛烈な努力を積んでいるのです。

言うなれば、そうやって無理して仕事の依頼を勝ち得た上で、がむしゃらに努力することによって、「顧客の期待を裏切る」という最悪の結果だけは、何としても避けているのです。

そんなことを繰り返しながら実績を残し、経験を積んで、自らどんどん成長しながら、事業を発展させていくのです。

万が一、力不足を露呈してしまい、顧客の期待に応えられないという最悪の結果を招いたとしても、元々が失うものなど何もない身です。

ゼロはゼロのままで済んだと割り切って、次にまた頑張ればいいのです。

単純に聞こえるかもしれませんが、起業したてのゼロスタート時に必要なのは、決して綺麗事ではありません

それくらいの開き直りが重要であり、守りに入る必要などないのです。

機会損失は成功を遠ざけているだけ

とはいえ、私は決して「自分には到底不可能と思われるような無理な要求でも何でも受け入れて、ハッタリで仕事を取っていくべきである」と言っている訳ではありません。

出来ないことは「出来ない」とハッキリと明言する、毅然としたスタンスが必要な局面だってあるのです。

※参考
→「成功者は「出来ない」とは言わない?

ただ、特に起業したての初期段階において、自らの力量不足や経験不足をさらして顧客に不安や心配を抱かせ、ひいては仕事の依頼を辞退させてしまうような状況は、努力すれば決して出来ないこともないであろう仕事のチャンスを、自らの振る舞い一つでみすみす逃してしまっているだけであり、ひいては成功という最終目的をどんどん遠ざけてしまっているだけなのではないかと、私は考えているのです。

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