細部にはこだわらない

何をやらせても、細部にまでとことんこだわり、凝りに凝った上で、完璧な仕事をする人がいます。

例えば、資料の作成ひとつとっても、フォント・文字の配置や大きさ・色使いなどにまでとことん気を遣い、誤字や脱字も当然皆無で、体裁としては完璧に仕上げてくるような人です。

パワーポイントでは素敵なエフェクト(アニメーション)をふんだんに使用し、エクセルでは詳細な美しいグラフを何パターンも作成してくるような人です。

それはそれで大変素晴らしいことです。

決してそれは否定しないのですが、もしそれによって、求められている水準以上のオーバーワークとなってしまったり、肝心な部分が伴っていなかったりすれば、それは見事に本質を見失っていると言わざるを得ません。

求められている水準以上のオーバーワークとは、例えば、社内の限られたチーム内で利用するだけなのに、役員あるいは社外の大事な取引先に対するプレゼンテーションで使用するような大層な資料を、何時間も何日もかけて準備するような場合のことです。

肝心な部分が伴っていないというのは、要するに、一番大事であるその内容が、体裁に反して優れたものになっていないということです。

こうなってしまうと、「あの人に頼むと出来はいいんだけど時間がかかりすぎる」とか、「あの人の仕事は一見素晴らしいんだけど、実は中身が伴っていない」などといった評価になり、実際に仕事で頼られることが少なくなってきます。

周りの人からすれば「どうでもいい」ことにやたらとこだわって、そこに時間や労力といったリソースを惜しげもなく費やす「痛い人」になってしまうという訳です。

本末転倒に陥るな

さて、起業家についても、同じようなケースが見られることが多々あるのです。

それは例えば、事業計画書ひとつにしても、体裁など本質ではない部分にとことんこだわり、実際の中身がてんで伝わってこないようなケースです。

事業計画書で一番大事なのは、起業家がその事業に懸ける熱い思い、胸に秘めた魂が、どこまで受け手に伝わるかということではないでしょうか。

確かに、体裁は大事ですし、体裁がきちんと整っていることで、その魂を感じられることだってあるでしょう。

ですが、肝心な本質の部分、いわば文字通り「事業計画」のその内容がなおざりだったり、どこにでも見られるような通り一遍のものだったりすれば、決定的な本末転倒に陥っていると言わざるを得ないでしょう。

「社長ブログ」を読んでみる

私がこれまでお付き合いしてきた人の中で、成功している起業家や、「この人は出来る」と思わせてくれるビジネスマンの方は、全員が全員、すべてにおいて完璧だったかというと、決してそうではありません。

どういうことかというと、例えばメールの文章ひとつとっても、日本語としておかしいところだらけだったり、誤字脱字ばかりだったりするという人もいるのです。

もちろん、必ずしもそれを是とする訳ではありませんが、それでもその人が成功したり仕事が出来たりするというのは、本質は決してそんなところにはないからだと思っています。

それを感じるには、大小様々な規模の企業のトップ、要するに社長さんが書いている、いわゆる「社長ブログ」というものが世の中には溢れていますから、試しに、そのうちのいくつかをピックアップして、目を通してみるといいかもしれません。

ブログは書籍などと違って、編集者による校正などが基本的にはありませんから、ご本人の生の文章に触れることが出来るのです。

すると、経営手腕に優れ、順風満帆に見える企業の社長さんや、斬新な発想で素晴らしい商品を世の中に提供しているような社長さんであっても、意外とおかしな文章を書いていることも多いということがよく分かります(笑)。

でも、それでいいと思うのです。

重要なのは、社長としての実際の言動や判断、立ち居振る舞いなどであって、優先すべき事項、注力すべき事案、大事にすべき本質は、決して「きちんとした文章を書く」という、そんなところにはないということなのです。

とにかく前に進んだ者が勝つ

私が数々の起業家や成功者とお会いして痛感していること。

大変語弊はあるかもしれませんが、それを恐れずに言えば、「世の中、意外といい加減で大丈夫」ということ。

「仕事なんか雑でいい。大事なのは早さだ」といってはばからない成功者も、世の中には多くいます。

100%その文字通りの意味に賛同するものではありませんが、そのエッセンスは汲み取るべきだと考えます。

世の中、細部にこだわって停滞するよりも、とにかく前に進んだ者が、勝つのです。

タイトルとURLをコピーしました