「一度しか言わないからよく聞いておけ」
「同じことを何度も言わせるな」
「二度と同じ失敗はするな」
,etc,etc,etc…
ビジネスの場では、上司や先輩からよく聞かされる言葉です。
しかしながら、何事においても、一度で覚えたり、同じ過ちや失敗を二度と繰り返すことがなかったりするような優秀な人など、そうそういないと思っていたほうが賢明です。
一度で覚えられず、二度三度と言われてようやく身についたり、同じ失敗を何度も繰り返したりしながら成長していく…それが人間というものではないでしょうか。
もっとひどいケースになると、一度も教えることなく、「普段見てるから分かるだろ?」の一言で、いきなり実践に投入してしまったりします。
それで出来なかったり失敗したりすると、「いつも何を見てるわけ?」と厳しく叱責するのです。
こんなことでは人は育たないし、事業も決してうまくいかないことが多いでしょう。
オール・ユー・ニード・イズ・キル
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」という、トム・クルーズさん主演のSFアクション映画(2014年公開)がありました。エミリー・ブラントさんやビル・パクストンさんなど、バイプレイヤー陣も豪華な作品です。
※観ていない方もいらっしゃるかと思いますので、以下、予告や作品紹介で触れられている以上のネタバレはございませんのでご安心ください。もし、わずかな情報ですら知りたくない場合は、この節は読み飛ばしくださいませ。
日本のライトノベル「All You Need Is Kill」が原作のアメリカ映画ですが、「Live Die Repeat」というキャッチコピーからも分かる通り、「死ぬ → 過去に戻って生き返る」を繰り返すタイムループものです。
あまり詳しいストーリーをここで触れることはもちろん控えますが、死ぬ(戦死する)と記憶はそのままに過去へ引き戻され、再び同じシチュエーションが繰り返される(戦場に赴かなくてはいけない)ため、その度に少しずつ鍛えられていくという、主人公の成長が描かれています。
つまり、既に経験済みであるが故、次の展開も分かっているため、戦場で生き抜くことが徐々に上手になっていく訳ですが、それでも結局は死んでしまって…そしてまた過去に戻って…をひたすら繰り返す訳です。
要するに、一言で乱暴に言えば、トライアンドエラーを壮大に繰り返す話なのです。
私がこれを観てふと頭をよぎったのは、同じことをひたすら繰り返す中で、「一度死んでしまった場面で、再び同じように死んでしまうようなことはなかったのだろうか?」という疑問です。
映画内では、当然端折られている部分もあり、1回1回のループが詳しくこと細かに描かれている訳ではないので分かりませんが、それでも、「やべ、またここで死んじゃった(泣)」っていうケースって何度もあっただろうな、と想像する訳です(笑)。
すなわち、生死がかかっているという緊迫した場面でさえ、同じ失敗をやってしまう…それが普通の人間だと思うのです。
山本五十六の精神
さて、二度三度と同じことを言われないと覚えられなかったり、同じ失敗を何度も繰り返して成長したりするのが人間であるということを前提とした時に、起業家や経営者(トップ)として組織のメンバーにどう相対したらいいのか。
月並みな答えですが、「人間とはそういうものだ」と広い心で受け入れつつ、何度も言って聞かせる、教え込む、覚えさせる…をひたすら繰り返すしかないと思うのです。
こちらが粘り強く同じことを繰り返してやることで、少しずつ成長してくれるはず…事業と同じで、結局は人間の成長も、コツコツとした積み重ねでしかありません。
そして、その過程においては、合間合間で労いの言葉をかけてあげるなどの配慮も必要かもしれません。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
すべて、かつての大日本帝国海軍に所属した軍人、山本五十六の有名な言葉ですが、必要なのは、まさにこの精神でしょう。
一度教えたことは頑なに教えなかったり、一度で覚えない相手に愛想を尽かしたり、二度目以降の同じ失敗に激高したり…。
そんな狭い了見と偏ったスタンスでは、起業家としての成長も、事業の発展も、ひいては来るべき成功も、決して手にすることなど出来ないでしょう。
もし出来たとしても、それは「優秀なメンバーにたまたま恵まれた」「運が良かった」といった偶然の域を、決して出ないものであると考えられるのです。