助成金や補助金には要注意

起業時の資金調達において、金融機関からの融資以外に、国や自治体などが実施している助成金補助金を活用する方法があります。

Googleなどの検索サイトにおいても、「起業」と入力すると、「助成金」「補助金」といった単語が、それに続く候補(サジェスト)の上位として挙がってきます。

それは、それだけ多くの起業家が、助成金や補助金を獲得しようと、インターネット上で検索や調査を行ったという証左でもあるのです。

その種類や内容のみならず、申請から支給までの手順などが懇切丁寧に説明されているような素晴らしいWebサイトも多くありますので、国や自治体の情報などと併せて活用すれば、専門家に全く任せることなく支給を受けることも、決して不可能ではないでしょう。

ただ、助成金や補助金というものは、予算による打ち切りや、社会環境の変化による廃止などが随時行われたり、あるいは逆に、これまでなかったものが新たに制度化されたりするため、常に最新の情報を入手するよう、大いに留意する必要があります。

助成金をあてにした事業など長くは続かない

さて、起業当初の立ち上げ資金として、助成金や補助金に頼ること自体は、もちろん決して悪いことではありません。

しかしながら、起業後一定の期間が経過してからも、自分が支給を受けられる助成金や補助金がないか、あれやこれやと躍起になって探しているような起業家がいます。

その様子は、まさに本業そっちのけといった感じで、何だか本末転倒してしまっている印象は否めません。

そうしているうちに事業が軌道に乗って…といったケースが全くないとは申しませんが、多くの場合、そんなことではいつか行き詰まることが目に見えています。

そもそも、助成金や補助金をあてにした事業継続など、いつまでもうまくいくはずがないからです。

助成金はリアルタイムなキャッシュとはなりにくい

極端なケースでは、事業計画の中に、助成金によって得られるお金がまるで「売上」のように計上されていることがあります。

つまり、その助成金ありきの収支計画となっているため、もしその助成金が打ち切りになったり、何らかの原因で支給が受けられなくなったりした場合、収支が立ち行かなくなり、事業の存続自体がままならない状況に陥ってしまうことが明白なのです。

基本的に助成金や補助金というものは、未来永劫ずっと続くようなものではありません。

冒頭でも触れた通り、当初予算の上限に達して打ち切りになったり、社会環境の変化によって制度自体が消滅したりすることは、全く珍しいことではないのです。

また、当然、審査というものがあり、誰でも必ず支給が受けられるというものでもありません。

条件によっては支給要件を満たせず、支給が受けられない場合もあるのです。

さらには、仮に支給を受けられる条件が整っていたとしても、すぐに入金が実行される訳ではありません。

審査その他の手続きに時間を要し、長い場合は申請から実際の支給までに数ヶ月以上かかることもあり、日々変動する事業状況において、リアルタイムにキャッシュが必要な名目に対してそれを当てにすることは、全く現実的ではないのです。

助成金はあくまで「助成」である

ともあれ、こうやって少し考えてみただけでも、助成金や補助金ありきの事業計画や、それに頼った事業継続というものが、そもそもいかにリスクが大きく、破綻する可能性が高いかということに、お気付きいただけるかと思います。

助成金や補助金は、特に一度でもその恩恵を被る経験をしてしまうと、何度でもその助けを受けられるような錯覚に陥りがちになるものです。

あまりいい例えではありませんが、麻薬覚醒剤のように中毒になる起業家さえいます。

要するに、上述した、自分に見合う助成金や補助金を、躍起になって探すことだけに奔走している起業家のことです。

あまりにそれに熱中することで、本業に注力することが出来なくなってしまうのです。

ひいては、願いがかなって助成金や補助金の支給を受けられると、まるで本業で儲けが出たかのように錯覚し、必要以上に喜びを感じ、さらにまた次の助成金や補助金を求めに走ります。

こうなってしまっては、もはや末期症状です。

まさに麻薬や覚醒剤のように、抜け出すことが非常に難しくなります。

とてもではありませんが、これは起業家や経営者などと呼べる状態ではありません。

ましてや、成功を手に入れることなど、到底不可能であると言えるでしょう。

助成金や補助金というものは、本来、文字通り「助成」であり「補助」であるのです。

起業当初の不安定な時期に、助成や補助として活用するのが筋であって、以後もそれありきに事業を回していくことなど、決してビジネスなどではありません。

「もらえればラッキー」くらいに考えておくべきものなのです。

助成金や補助金を獲得することに躍起になるエネルギーがあったら、それを本業に向け、自らの事業の発展や、起業家としての自己研鑽に励んだほうが、余程賢明なのです。

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