「どこに行っても、どんな環境でも、出来る人は出来るものだ。」
「自分の置かれた環境や組織のせいにするのは、出来ない人の言い訳だ。」
「今の環境で結果が出せないという人は、他の環境に移ったところでやはり結果が出せるものではない。」
根性論を展開するセミナーや自己啓発本の類い、あるいは体育会系のノリの上司などからよく聞かされそうな言葉ではありますが、確かに、世の中にはどこに行っても、どんな環境であっても、あるいは何をやっても、それなりに結果を出してしまう人というのが存在します。
これらの言葉に真っ向から反論する訳ではありませんが、ただやはりその一方で、不可抗力という言葉で片付けたくなるほどの、その環境が故のどうしても無理な状況や、どんなに努力しても如何ともしがたい困難があるというのも、決して否定は出来ないでしょう。
器用なことと仕事が出来ることは100%同じではない
どこに行っても、どんな環境でもそれなりに結果が出せる人というのは、とりわけ要領が良く、器用な人であると考えられます。
ビジネスにおいては、器用であることイコール仕事が出来ることであるかのように語られることは多いですが、それは全くの誤りではないでしょう。
ただ、逆に言えば100%正しいとも言い切れないと考えられます。
要するに、本来は出来る人、ポテンシャルを備えている人であっても、置かれている環境によっては、その人が力を発揮出来ない、輝くことが出来ないという状況が、間違いなくあると思われるのです。
冒頭に挙げた言葉のような、画一的な判断で単純に済ませられる問題ではないということでしょう。
…と言いつつ実は私も
かくいう私も、サラリーマン時代は人事担当として数多くの採用面接を行ってきましたが、冒頭のような言葉に含まれる論理で、面接者と相対したことも数多くありました。
つまり、退職理由がネガティブなもの(例えば、会社の考え方や方向性に疑問を感じるなど)であれば、
「今の環境(会社)で、それを改善しようとは思わなかったのですか?」
「そのためにどういった努力をされたのですか?」
「それに対する周囲の反応や評価はいかがでしたか?」
…などと突っ込んでいく訳です。
逆に、退職理由が前向きなもの(例えば、こんなことをやりたい、あんな夢を実現したいなど)であっても、同じように、
「それは今の環境(会社)では実現出来ないのですか?」
「実現のためにどういった努力をされたのですか?」
「今の環境で出来ないとご判断されたのはどのような理由からですか?」
…などと畳み掛ける訳ですね。
その根底に、「出来るやつはどこにいたって出来る」「環境のせいにするな」といった感情があったことは、正直に言って間違いありません。
それが100%正しいことではないと分かりつつも、あえてそういう論調で質問をしていたという訳です。
もっと言えば、「無理なものは無理だよな」「ひどい会社にいたんだな」「可哀想な環境だったんだな」などと頭の片隅で考えながらも、あえて聞いていたのです。
こうやって書き起こしてみると、何だか私が相当嫌なやつだったように感じられるかもしれませんが(笑)。
もちろん、実際にはもう少し柔らかい言葉を選びながら、面接者の本意をうまく汲み取れるよう和やかにコミュニケーションしていたということは、どうかご理解ください(笑)。
自分自身をどこまで信じられるか
さて、少し話が逸れましたが、要するに、環境が人を潰してしまったり、ポテンシャルをスポイルしてしまったりといったことは、間違いなくあると思うのです。
プロ野球やJリーグなど、スポーツの世界に鑑みても、それは分かります。
いまいち結果が出せず、くすぶっていた選手が、他チームへ移籍することによって見事に輝きを取り戻すといったことが、往々にして起こっている訳です。
例えば、サラリーマンであるあなたが転職や起業を考え始めた時、本当にあなたは今の環境で輝くことが出来ないのか、花を咲かせることが出来ないのか、といったことを、慎重に検討することです。
例えば、起業したあなたが壁にぶつかって逃げ出したくなった時、今の自分は輝いているか、苦労したその先に光は見えるのか、といったことを、念入りに吟味することです。
これは、結果や実績とはまた別の次元の話です。
今は結果が出ていなくても、生き生きと働き、本当の自分が発現出来ているのであれば、逃げずに続けるべきかもしれません。
また、その逆もしかりです。
いずれにしても、肝心なのは、自分自身で吟味・検討し、評価することです。
「お前はダメだ」とか、「君はこの仕事には向いていない」とか、そういった周囲の評価は、あくまで他の人が下したものであって、優先すべきはあなた自身がどう考えるかということであるべきです。
その結果、これ以上輝くことが出来ない、光が見えないと判断したならば、早々に方向転換すべきなのかもしれません。
そして、いざ方向転換を決意したのであれば、自分がもっと輝ける場所、役に立てる環境が他にあるはずだと、自分自身をどこまで信じられるかが勝負です。
自分自身の可能性を大いに信じるその信念を強く持ち、努力した結果、見事に輝きを取り戻し、周囲の評価をひっくり返したという人は、この世の中にたくさん存在します。
それを忘れず、とにかくあなたも自分自身を信じて、突き進むことが大事になってくるでしょう。