とあるWebサイト運営者である起業家から、こんな話がありました。
そのWebサイトとは、自社のサービスについてのカタログが、無料でダウンロード出来るというものでした。
私も少し見せてもらったのですが、デザインも素晴らしく、大変綺麗に作成されており、UI(ユーザインターフェース、User Interface)的にも、特に問題は見当たりません。
話を聴けば、かなりの大金をかけて作成したもののようです。
しかしながら、サイトオープン以来3ヶ月が経過しても、カタログのダウンロード実績( = コンバージョン)が、ほとんど発生していないのだそうです。
アクセスがあるだけではコンバージョンは上がらない
当然、まずはそのWebサイトへのアクセス自体が少ないのだろうということを疑いましたが、曰く、アクセスはそれなりにあるのだそうです。
食事をしながらの世間話(愚痴)レベルだったため(笑)、実際どんなアクセスがどれくらいあるのかなど、これまでの指標や解析結果を詳しく聴き切れていないばかりか、そのWebサイトの構造や内容自体についても詳細な分析をしておりませんので、何とも言えない部分はあるのですが、本当にそれなりのアクセスを集めているのだとしたら…。
恐らく、原因の候補は色々と考えられそうです。
実際このように、かなりのアクセスを集めているWebサイトでも、コンバージョンがほとんど発生しないということは、今の時代、いくらでもあり得る話なのです(実は、十分なアクセスが集められていなかったというほうが、SEO対策とか、広告宣伝の問題とか、話は少し単純になって、私としては楽なのですが…(笑))。
「今の時代」とあえて謳ったのは、一昔前は、とにかくアクセスを集めさえすれば、たとえWebサイト自体の作りが劣悪なものあっても、それなりのコンバージョンが期待出来たからなのです。
しかしながら現在は、ユーザーもそれなりに賢くなり、Webサイトの出来栄えを始めとする様々な条件が整わないと、なかなかコンバージョンしてくれない時代になっているのです。
コンバージョンが上がらない原因は様々
さて、件のカタログダウンロードサイトにおいて、コンバージョンが上がっていかない原因は何なのでしょうか。
それを解き明かすのが当記事の目的ではありませんので、詳細は省きますが、一般的には、以下の通り様々な原因が考えられることでしょう。
例えば、名前や住所などの個人情報を入力する手間をかけるほど、そのカタログに価値がないと感じる人が多いのであれば、そもそもそのカタログのテーマである、サービス自体に問題があるということも考えられる訳です。
その状態で、いくら努力しても、カタログもダウンロードされないし、当然サービスも売れることはないでしょう。
あるいはもちろん、そのページのキャッチコピーなど、サービスの押し出し方に問題があるケースも多いものです。
いくらWebサイト自体のデザインは素晴らしくとも、キャッチひとつで売れ行きやコンバージョンが全く上がらないということは、よくある事実なのです。
万能なマーケティングなど存在しない
とにもかくにも、マーケティングは非常に難しいものです。
様々な要素が複雑に絡み合って、成り立っていくものだからです。
「うまくいかない理由は、これだ!」と、ピンポイントで改善箇所を指摘出来ることなど、ほとんどないと考えていたほうが賢明です。
さらにはそこに、複雑な人間の心理が絡むことも、事態を難しくしている大きな要因です。
しかもそれは、いつの時代も常に一定という訳ではありません。
世の中の流行や、メディアによる扇動、それらに伴う時代の趨勢などに従って、大きく変わってくるのが人間の心理なのです。
だからこそ、マーケティングを仕掛ける側も、それに合わせて手を替え品を替え、大きく戦術を変えていかなくてはなりません。
極論、未来永劫、不変のままずっと結果を出し続けられるマーケティング手法など、存在しないのです。
大事なのは緻密な構想と戦略
とはいえ、マーケティングの基本というものは、燦然と存在します。
すべてのマーケティング手法は、多かれ少なかれその応用と呼ぶことが出来るでしょう。
そして、基本を押さえることなく、様々なマーケティング手法を展開することなど、どだい不可能なはずです。
しかしながら、たとえ基本を押さえていたとしても、実際にマーケティングを展開する際に、単純に良さそうな事例を引っ張ってきて真似すればいいという訳ではないのです。
上述した、カタログダウンロードサイトのように、見た目には一見問題がなさそうであっても、実際には全く結果が出ていないということなど、特に珍しい事例ではないからです。
大事なのは、成功に向けた緻密な構想と、それに裏打ちされた戦略です。
それらがあって、初めてマーケティングが成り立つのであって、単純な真似をしてうまくいくほど、甘いものではないということです。
だからこそ、人々が常に頭を悩ませ、今も昔も様々な手法による試行錯誤が繰り返され、そこに専門家の歴とした存在価値というものがあるのです。