人によって多かれ少なかれ違いはあるでしょうが、概ね、起業して軌道に乗るまでの道のりにおいては、ダイナミックに自らの環境や周りの状況が変わっていくことになります。
その様が楽しくもあり、それがまたやりがいでもあり、かつそれらによって起業家としての自分を強く実感する充実した期間となるのです。
もちろん、毎日が厳しくて、目が回るほど忙しくて、尋常でない努力が必要となる時期でもあり、不安や心配が常に付きまとっていることは、大前提とした上での話ではありますが。
その不安や心配を、新たな情熱やモチベーションに変えることが出来る時期とも言えます。
ただ、その時期を抜け、一旦事業が軌道に乗り始めると、今度はその状態を出来るだけ長く維持したいという衝動が強くなり、変化することが怖くなることがあります。
要するに、変化の中に身を置き、その不安定な状況にこそやりがいを感じ、そこから生まれる不安や心配を自らの原動力としていた起業当初とは違い、今度は一転して、不安や心配のない、安定を求め始めるという訳です。
第二の山をどう乗り切るか
起業家にとって、起業当初のことさら厳しい状況が第一の大きな山だとすれば、それを乗り越えた後にどう立ち居振る舞うか、すなわち、事業がある程度軌道に乗った後に、安定を求めてしまいがちな自らの動機付けを含めてどう展開していくかが、第二の山であるとも言えます。
確かに、あまりに激しい変化というのは、誰にとっても大きなストレスとなり得るものです。
それ故、人間は放っておくと、安定した環境の中で安住することを求めがちです。
そう考えれば、事業が軌道に乗り、これまでの目まぐるしい変化に若干の落ち着きが見られた時点で、安定を求めたくなる気持ちは、痛いほどよく分かります。
ただ、起業家が安定や無変化を求めてしまうのは、いずれは間違いなく事業が停滞してしまうことを意味します。
起業家たるもの、変化を決して恐れてはならないのです。
事業運営とは変化の種を植え付け続けること
そもそも、事業運営なんて、世の中に変化の種を植え付け続けるようなものです。
その努力が実って、芽が出たことに安心してしまい、新たな種植えをやめてしまっては、いつか必ずどん詰まりになります。
その芽が成長し、一時は綺麗な花が咲いたとしても、時が経てばそれは間違いなく枯れ果てていくからです。
起業家が変化を嫌い、安定や無変化だけを求めてしまうことは、大きな花壇あるいは広大なお花畑において、たった一つ芽が出ただけで安心してしまうことと、何ら変わりはないのです。
そしてそれは、起業家自身の成長にとっても何一つ良いことはありません。
安定だけを求め、変化を避けることは、言い換えれば、自らの成長機会を拒絶することだからです。
そして、変化のない事業運営は、停滞化・マンネリ化を生むだけであって、起業家としてのプロ意識ですら、眠らせてしまうのです。
※参考 →「プロ意識を忘れない」
こうやって考えていくと、変化を恐れないどころか、むしろそれを貪欲に追い求めること、それこそが、起業家としての正しい姿なのかもしれません。